任侠ファンタジー(?)小説・光と笑顔の新たな世界 くまはち・番外編1


猪熊家・八男の想い

猪熊家にある道場。
今、その中央で、二人の男が、恐ろしいまでの雰囲気を醸しだして、睨み合っていた。
一人は、猪熊家の長男・剛一。もう一人は、八男の八造だった。
八造が、拳を握りしめた。その途端、その拳を目にも留まらぬ早さで剛一に差し出した。

「止めっ!!」

大きな声が響き渡った………。






くまはちは、勢い良く飛び起きた。そして、自分の拳を見つめる。

「またか……」

どうやら、AYビルの地下駐車場で剛一と出逢ってから、毎日のように、あの頃の夢を見るようで…。

あの頃。
それは、猪熊家で一番重要な事…阿山真子のボディーガードとして生きる道を選ぶ日の事。
長男の迷いをいち早く悟ったくまはちは、あの日の拳に、兄への感謝の気持ちを込めていた。

くまはちは、トレーナーに着替え、まだ、夜が明け切れていない道を走り出した。
真子と理子が立ち話をする公園の前を通り、駅に続く道を走っていく。
駅前の商店街。八百屋の主人が軽トラックでやって来る。

「おはよ! くまはっちゃん、今日は何処まで?」
「おはようございます。二つ先の街ですね。そこから河川敷を回って
 戻ってきますよ」
「いつもより多いんちゃうか?」
「今日は、休みですから」
「そうかぁ、ほな、気ぃつけやぁ」
「ご主人もですよ!」

笑顔で挨拶と軽い会話を交わして、二人は別れた。

くまはちは、更に走っていく。
空が白々と明るくなり始めていた。
真子の自宅から二つ隣の街にある須藤家の前を通る。
まだ、灯りはついていない。それをちらりと横目で確認して、くまはちは通り過ぎた。
そこから少し走ると河川敷が見えてきた。
階段を三段飛ばしで駆け上り、堤防の上へとやって来ると、そこには、犬の散歩やジョギングの人たちが、すでに居た。もちろん、顔なじみの人たち。軽く会釈をして、くまはちも走り出す。
いつも真子とまさちんがやって来る所は、かなり先。
今日は、真子は休みを無理矢理取らされた。恐らく、まさちんとのんびりしに来るだろう。
そう思うと自然と、その場所に意識を飛ばす。

別に、危険な場所ではないのだが……。

くまはちは、河川敷へ下りていく。
少し広くなった場所で立ち止まり、体を動かし始めた。
軽く飛び跳ねたり、屈伸したり、腕を伸ばしたり…。
少し離れた場所では、ラジオ体操が始まった。自然とリズムに合わせて体が動き始めるくまはちだった。

朝日が昇り始めた。
くまはちは、その朝日を見つめながら、深呼吸をする。
ふと思い出すあの日のこと。





朝日が昇る頃。八造は、河川敷を走っていた。ふと目をやると…。

「兄貴??」

自分と同じように河川敷を走っている剛一が、足を止め、誰かと笑顔で話し込んでいた。
犬の散歩をしている女性だった。
母が亡くなった頃に八造によく見せてくれたことのある剛一の笑顔。
八造は、なぜか懐かしく思った。
そして、その時に、剛一が、その女性に気があることも悟ってしまった。

別の日。
剛一は、いつものトレーニングを休み、どこかへ出掛けていった。
八造は、不思議に思ったが、取り敢えず、学校へ向かう。
まだ、中学生の八造は、嫌々ながら、学校へと登校する。なぜ、嫌々かというと…。

校門をくぐった途端、たくさんの女生徒が駆け寄ってくる。

「猪熊くん!! これ、受け取って!」
「猪熊君おはよ!!」
「猪熊くん!」
「猪熊くぅん!!」

八造が登校してくるのを待っているかのように駆け寄る女生徒たち。しかし、八造は、嫌な顔をしながら、何も応えずに教室へと向かっていく。
初めの頃は、こんな光景を見ていた男子生徒から、ちょっかいを掛けられていたが、八造の家庭環境、そして、八造の怒り(いかり)を知っている為、今では、何も言わなくなっていた。
それどころか、不良グループは、引き込もうとしているのだが…。どうしても声が掛けられず、遠巻きに見つめているだけ……。
授業が始まったものの、あまりのたいくつさに、教科書の先の方に目を通したり、別の勉強をしたりと、先生の話を聞かない他の厄介な生徒よりも、厄介な八造。
先生は、常に、そのことを言っていたが、八造は、聞く耳持たずだった。


下校時間。
八造は、女生徒達が話しかけてくるのを気にもせず、校門へと向かっていった。校門を出ると一台の車が停まっていた。車の後部座席のドアが開き、一人の男が降りてきて、八造に近づいてくる。

「八造、来い」

八造が何かを言う前に、男が声を掛けた。
その男は、八造の父親だった。父親の言葉に逆らうことが出来ない八造は、言われるまま、車に乗り込んだ。
父親は何も言わず、八造は何も尋ねず、沈黙の中、車は走り出す。
向かった先は、自宅近くにある阿山組組本部。
本部に向かうなら、迎えに来なくても…と、八造は思い、眉間にしわを寄せた。その本部の近くにある公園の前を通り過ぎた時だった。公園から、母と娘が出てきた。

「…慶造の機嫌が悪くなる…」

そう呟いた父親は、すぐに車を停め、素早く車を降りた途端、親子に駆け寄った。
八造は、父親の行動を見つめていた。
母親と親しげに話す父親。母に抱きかかえられた娘が、父親に向けて笑顔を見せていた。

誰だ??

いつも自分の前で見せる厳しい顔の父親と違い、その娘の前では、常に笑顔だった。不思議に思いながらも、その様子を見ていた八造。
父親は、母親に頭を下げて車に戻ってきた。運転手に話しかける父親。

「まだ、散歩するってさ。お嬢様も、遊び好きなんだなぁ」
「そうですか。…しかし、誰が?」
「小島親子」
「なら、安心ですね」
「まぁな。慶造も…っと四代目は、のんびりしてるそうだよ」
「真北さんに謹慎言われたんですよね」
「そうや。あんなことするからや」
「仕方ありませんよ。四代目ですから」
「そうだな」

そんな会話の中、車は、本部の門をくぐっていった。
車から降りた父親と八造は、玄関を通り、慶造の部屋へとやって来た。

「お前は、ここで待ってろ」
「はい」

ふてくされながら、言われた場所に立っている八造。父親は、八造の姿を見てから、慶造の部屋へと入っていく。
暫くして、二人の楽しそうな会話が聞こえてきた。八造は、聞き耳を立てながら、窓から見える庭の景色を眺めていた。
そこに先ほどの母娘が現れた。娘は、母と楽しそうに遊び始める。
ふと、何かの気配を感じ、目をやった。
そこには、少しいい加減そうな父子の姿があった。その二人は、窓から、庭にいる母と娘を見つめていた。
まだ中学生の八造には、解らない事が多かった。
阿山家と猪熊家の話は、物心着いたころから、聞かされていた。しかし、その『仕事』は、長男である剛一がするもの。八造には関係ないことだった。

あの娘…笑顔が素敵だな…。見ていて、心が和む……。

「…う…。…八造!」
「あっ、はい!」
「ボケッとすんな」
「すみません…」

慶造と話が終わったのか、父親が廊下に出てきて、声を掛けていた。父親は、八造が見つめていた先に目をやった。

「…ちさと姐さんと真子お嬢様だよ。かわいい笑顔だろぉ。心が和むんだよ。
 こんな…俺でもな。…真子お嬢様を守る仕事は、剛一がすることになる。
 お前ら兄弟の中では、何にとっても一番だからな。…お前も候補だけどな、
 どうしても、剛一に遠慮するだろ」
「兄貴には、世話になってますから」
「世話になっていても、やるときは、やる…それが、俺たちの生きる世界だ」
「解っております」
「…まぁ、お前は、剛一よりも力があるというのに、今一つ足りないんだよな。
 優しすぎるんだ。それだけの腕があるというのにな」
「すみません」
「まぁ、それが、八造の良いところだけどな。…で、まだ、和むか?」
「いいえ…。今日は、一体…」
「ん? 別に何もないがな」

そう答えた父親だが、何か訳があった様子。だが、八造は、敢えて尋ねなかった。

「親父、あの二人は…?」

八造にしては、珍しく、他の人間を気に掛けていた。

「小島親子だが…」
「そうでしたか…あの二人が、親父と同じ仕事をしている…」
「あぁ。まぁ、いい加減そうだけどな…やる時は、やるからな。
 お前も肝に銘じておけよ」
「はい」
「帰るとするか」
「はい。…その御挨拶は?」
「慶造に?」
「えぇ」
「せんでいい。お前が仕事を継ぐというなら、逢わせるけど…。
 ほら、行くぞ」

猪熊親子は、静かに本部を去っていった。




八造は、自分の部屋で勉強中。
暫くすると、階下から、剛一と父親の言い争う声が聞こえてきた。八造は気になり、廊下に顔を出す。

『だから、親父…お願いだよ』
『駄目だと言ってるだろが。そんなに、その女性と暮らしたいのか?』
『はい。…彼女には、私の立場を話しております。それでも、彼女は、
 いいと申しました』
『馬鹿やろ! あれ程、言ったのに、まだ、解ってなかったのか? 
 この仕事は、家族を犠牲にする。…お前だって、知ってるだろが。
 俺の怪我で、どれだけ、あいつが苦労したのか…俺の為に…
 あいつは、この世を去ったんだぞ! そんな哀しい生活をさせること
 解ってるなら、いっそのこと…』
『覚悟の上です。…だから、親父…彼女に会ってください…お願いします』
『断る』
『親父!』
『…お前が、跡を継がないというなら、すぐにでも逢ってやる。だけどな、
 剛一…お前なんだぞ…真子お嬢様を守るのは』
『解っております。ですが…』
『跡目を継がないかもしれない。極道の世界で生きていかないかもしれない。
 それでも、阿山家の為に仕えるのか、俺たち猪熊家の誇りだ…』
『はい。その為に、俺は、頑張ってきました。でも、大丈夫です。
 真子お嬢様を守り、そして、彼女も守ります』
『何が起こるか解らない世界だぞ。そんな考えは、捨ててしまえ!』

大きな足音が奥の部屋に去っていく。父親の怒りが伝わっていた。
暫くして、鈍い音も聞こえてくる。どうやら、剛一が怒りまかせに、壁を殴った様子。
八造は、そっとドアを閉め、何かを考え始めた。


次の朝。
河川敷を走っている時だった。またしても、トレーニング途中に剛一と女性の姿を見かけた八造。この日、剛一が八造の姿に気が付いた。剛一が手招きしている。八造は、素早く走り寄った。

「なんですか?」
「こいつが、八男の八造。兄弟の中では、俺の次に凄腕。八造、
 この人は、小百合さん。いつも、ここで犬の散歩している時に
 逢っていてな…その…俺…一目惚れ」

そう言った剛一は、照れたように目を伏せていた。その仕草で剛一の昨夜の話を思い出す。

「もしかして、夕べ、親父と言い争っていた…」
「まぁ、やっぱり、剛一さん、言い争ったのね! そうならないようにと
 何度も言ったでしょぉ!」
「親父…頑として拒むんだよ…。もっと言ってみるから」
「…兄貴、もしかして…」
「あん? そうや。俺、小百合さんと結婚したいんだよ。小百合さんも
 俺の立場…猪熊家のこと、理解してくださった。だから、俺は
 親父に紹介したいんだ。だけど…俺が跡目を継ぐだろ。
 お袋のことを未だに悔やんでいる親父にな…何を言っても…」
「そうですね。…親父…頑固ですから」

暗くなる雰囲気に小百合が明るく言った。

「八っちゃんもトレーニングしてたの?」
「は、は、八っちゃん?!?」

驚く猪熊兄弟。

「八造さんでしょ? いいじゃない、八っちゃんで」
「あの、その…」

何故か焦る八造。その表情は、小百合の心を動かしていた。

「剛一さんと違って、かわいいわぁ」
「おいぃ、小百合さぁん! こいつは、こう見えるけど、厄介なんだよ。
 中学校に行きたくないと言い出すし…」
「本当のことですから」

八造は応える。

「どうして? 友達と楽しい時間でしょ?」
「私、友達居ません。それに、連む(つるむ)のが、嫌なんです」
「騒ぐの嫌いなんだ」

ちょっぴり寂しそうに小百合が言った。

しまった…。

小百合の表情を見て、八造は少し焦りを見せ、何かを話さなければ…と話題を探し始める。

「あっ、そうだっ」

八造とは違い、小百合が何かを思いついたらしい。

「今日、お休みでしょ? 三人で遊びに行こうか?」
「私は、トレーニングを致しますので。…申し訳ありません」
「真面目なんだぁ、剛一さんと違って」
「だぁかぁらぁ~小百合さぁん?」

流石の剛一も、この小百合には弱い様子。
それに気づき、八造は何か閃いた。
「兄貴が弱いなら、親父も折れると思うけど…。もう一押ししてみれば?」
「八造?」
「では、失礼します」

そう言って、八造は、走っていった。

「ふ~ん。あれが、八造くんなんだ」
「あぁ。俺より、凄腕なんだけどな。俺に世話になってるからと言って
 いっつも手加減するんだよ。力をコントロール出来るくらいだ。
 …本当は、俺よりも、向いているのかもしれないんだが…」

剛一は、フッと息を吐く。

「あいつが幼い頃に母が亡くなったからな…。寂しい表情が、あまりにも
 印象的でな…。時々優しく語りかけていたんだよ。忙しい親父に
 代わって、俺が育てたようなもんだからな…」
「優しいね」

小百合は、剛一が言いたい言葉を知っていた。

無理をさせたくない。八造の思うように生きて欲しい。

「ん?」
「剛一さんも八造くんも、優しいなぁと思って。…でも大丈夫なの?
 その優しさって……」
「あぁ…あの世界では命取りになるんだよなぁ。困ったなぁ…」

剛一の『困った』には、二つの意味が込められていた。
それにも気付く小百合は、

「私…おじさんに逢う。こっちから、押しかけてやるから!」

力強く言った。

「って、小百合さぁん」
「いいの!!」

小百合は、微笑んでいた。それには、流石の剛一も弱かった。

八造は、その日、稽古場から出てこなかった。何かを忘れるように、そして、何かに集中する…。


それから、一週間後、小百合が猪熊家に遊びに来た。
本来なら、部外者を入れないようにしている猪熊家だが、剛一が、強引に連れてきたのだった。
もちろん、父親は良い顔をしなかった。だが、あまりにも明るい小百合の話を聞いているうちに、父親は、何かを思い出す。
自分がこの道を選ぶことになった日のこと。そして、愛する者を引き込んだことを…。

俺と同じ道を歩むことになるのか……。




……それは、八造と稽古を終えた時だった。父親が、ボソッと呟いた。

本気になってみろ…。

その言葉で、八造の心にある何かが吹っ切れた。
そして、父親に訴える。

俺も候補に入れてください。



その後、八造が、阿山真子のボディーガードに選ばれた……。






くまはちは、足下に何かを感じ、目をやった。子犬が、じゃれていた。
くまはちは、そっと抱き上げる。首輪が付いているのが解った。

「迷子かぁ?」

優しい眼差しで子犬に話しかける。

「ごめんなさぁい!! 私の犬ぅ~!!」

そう言って駆けてきた女の子。くまはちの前に立ち停まり、深々と頭を下げた。

「あっ、その…どうぞ」

くまはちが、子犬を女の子に手渡した。

「ありがとうございます。その…私……百合恵といいます。
 お兄さん…いつも見かけていたんです…その……」
「私も覚えてますよ。いつもは、もっと大きな犬を連れてましたよね」

くまはちの言葉に照れる百合恵は、頬を赤らめていた。

「あの…もし、よろしければ、少し一緒に歩きませんか?」
「いいですよ」

思わず、そう応えたくまはち。実は、この百合恵という女の子の視線はいつも感じていた。職業柄(?)、自分の周りに居る人間を覚えている。そして、その視線の意味を探るために…。

「あの犬ね、死んじゃったの。老衰だった。二十年も飼ったんだよ」
「長生きですね。それなら、もう家族みたいな感じだったのでは?」
「うん。だから、凄く寂しかった。でもね、この子犬!」
「この子犬は、もしかして…?」
「あの犬の孫」
「孫?」
「うん。たくさんの子供を作ったんだもん。血統が良いって聞いたんだけど、
 雑種だったの。…何の血統なんだろ…」
「確か、種類が少ないはずですよ」
「お兄さん、犬のこと詳しいの?」
「少しだけですけどね」

その声に、百合恵の鼓動が高鳴った。

「いつも走ってるけど、トレーニングなんですか? 何かスポーツでも?
 体格も素敵だから、スポーツ選手だと思ってるんですけど…」

矢継ぎ早に質問する百合恵に、くまはちは、優しく答える。

「仕事に必要ですからね」
「どんな仕事をしてるんですか?」
「何をしてるか、解ります?」

百合恵は、くまはちをじっと見つめる。

「う~ん、警察?」
「警察の人が、こんな時間に、こんなところに居るわけありませんよ」
「そうですね。…教師……う~ん。降参です」
「ボディーガードです」
「すごぉい!! だから、体力作りが必要なんですね!」
「そうですよ」
「かなりの距離を走ってますよね」
「ん?」
「だって、ご自宅…駅の向こうでしょう?」
「そうですが…」
「ごめんなさい…その……気になっていたので、…付けたことあるんです」
「走った?」
「自転車で」
「なるほど…あの時か…」

どうやら、付けられていたことに気が付いていた様子。

「思いっきり走ったんだけどなぁ、あの時」
「思いっきりこぎました」
「疲れたでしょう?」
「その日は、夜まで、ぐっすり眠ってました」
「そうでしょうね」

くまはちは、素敵な笑顔で百合恵を見た。百合恵も微笑んでいた。

「あの…これからも、今の距離だけ…お話してくださいませんか?」
「毎日とは、いきませんよ」
「それでもいいです。…私、この時間に、毎日散歩しますから」
「あまり無理しないでくださいね」
「…本当は、連絡先をと思ったんですが、いきなりそれは…」
「確かに、警戒してるでしょうね。でも、百合恵ちゃんは、顔見知りですよ」
「よかったぁ~」

そう言って、百合恵は、百合の絵が描かれた封筒をくまはちに手渡した。封筒の表には、『素敵なお兄さんへ』と書かれている。

「私の連絡先です。これからも、よろしくお願いします。あの…」

封書の宛名と百合恵の仕草から、何を尋ねたいのか解るくまはちは、優しく応えた。

「猪熊です」
「猪熊さん…。では、これで」

百合恵は、笑顔で手を振って、去っていった。
突然の事で、くまはちは、戸惑っていたが、封筒に入れられている手紙を読んで、何かを思い出していた。

「似たもの同士って言われるわなぁ」

くまはちは、その封筒を内ポケットに入れ、走り出した。

自宅から離れている所に向かうのか、早めに出勤するサラリーマンやクラブ活動で朝早く登校する生徒達とすれ違う。いつの間にか、そんな時間になっていた。それだけ、河川敷を走っているくまはち。

「そろそろ戻るか」

そう呟いて、河川敷の階段を下りていった。

真子が通っていた中学校の前を通る。まばらに生徒達が登校している姿を見つめながら、走っていく。
ちらりと時計を見た。
午前七時半。
ちょっぴり遠くまで走りすぎた様子。それは、真子が休みの日だけのコースだった。そして、真子の自宅へと戻ってきた。
直接、庭に足を運び、そこで再び体を動かし始める。
空を蹴る。
拳を三度、差し出す。
回し蹴りをする。
地面に伏せた途端、腕立て伏せを始める。それは、かなりの早さ。腕立てが終わったと思ったら、今度は腹筋を始めた。
その動きが、ふと止まる。
庭木の一部が乱れていた。

「ったく…」

そう言って、庭の隅にある倉庫から庭木の道具を取り出して、手入れを始める。気になる箇所を直したくまはちは、再び、体を動かし始めた。

『くまはちぃ~』

真子の呼ぶ声に素早く反応し、家へと入っていく。


「組長、まだ、早いですよ」

少し汗ばむ体のまま、真子の部屋に顔を出す。

「早いって言っても、一体、どれだけ体を動かしてるんよぉ。
 朝が明ける前に出掛けたんでしょぉ。帰ってきたと思ったら、
 庭から全然、戻ってこないんだからぁ」
「すみません。組長は昼まで寝ていると思っておりましたから…」
「…ぺんこうに起こされたの」
「ったく…」

組長は、疲れてるから、静かに寝かせておけと言ったの、ぺんこうだろが。

昨夜のぺんこうの言葉を思い出すくまはちは、軽くため息を付いた。

「まだ、動かすん?」
「いいえ。…って、まさちんは?」
「…やることあるって」
「そうですか。まさちんがするなら、私が…」
「いいの。まさちんに、させとく! 今日は、くまはちと過ごすぅ!」
「あの、組長…」
「家に居るって。それに、AYAMAの試作品もあるでしょ? 何本預かった?」
「二本です」
「一緒にしよ!」
「お願いします。汗を流した後、朝食の用意、致します」
「むかいん、作ってったから、私が用意するよ。ゆっくり入っておいで」
「お言葉に甘えます」

そう言って、くまはちは、階下へ降りていった。真子は、猫パジャマから、部屋着に着替えて、リビングへ降りていく。そして、キッチンで、朝ご飯の用意をし始めた。

くまはちは、シャワーを浴び、すっきりとした表情で、体の水分を拭き上げる。そして、着替え、キッチンへと顔を出した。

「どこまで、行ったん?」
「中学前までですね」
「すごい距離やん。だけど、足りないでしょ?」
「そうですね」
「ほんとに、体を動かしてな、あかんみたいやなぁ」
「そうですよ。そう鍛えましたから」
「そっか。さ、食べよ!」
「はい。いただきます」
「いただきます!」

真子とくまはちは、朝食を取り始めた。



AYAMAの試作品は、真子が一人で見ていた。くまはちは、庭の手入れを再び始める。どうしても気になるらしい。
真子が試作品の一本目を終えたのは、昼前だった。くまはちが、中々戻ってこない事が気になったのか、真子は、庭に顔を出す。
くまはちは、芝生の上に寝ころんでいた。
真子が靴を履いているとき、くまはちが体を起こす。

「組長」
「起きてたんだ…チェッ」

眠っていると思ったのか、驚かそうとしていた真子。くまはちは、真子の動きには敏感だということ忘れている真子だった。

「試作品、どうでしたか?」
「やっと一本終わったとこ。手直しは少ないよ」
「ファイルをちらりと見た時、そうだと思いましたよ」

真子は、くまはちの横に腰を下ろし、庭木を見つめた。

「和むね、いつ見ても。本部も、そうだよね」
「いつの間にか趣味になってました」
「それは、私のボディーガードに決まった頃だったよね」
「えぇ。兄貴へ一撃した後、庭木を崩してしまいまして…。その際に
 なぜか、興味を…」
「くまはちが、庭木も手入れするとは、誰も思わないだろうなぁ」
「ボディーガードのイメージが強いでしょうからね」
「そだね」

真子は、空を見上げた。
青空が、広がっている。

「良い天気だなぁ~。…あっ、洗濯…」

そう言って、真子は立ち上がる。

「そうでした。それは、私が」
「手伝うよぉ」
「部屋の掃除をお願いしてもよろしいですか?」
「いいよぉ」

そして、くまはちは洗濯を、真子は掃除を始める。
十二時を回った頃。
真子は洗面所を掃除していた。
そこに置かれている百合柄の封書に目が留まる。

「素敵なお兄さん????」

真子は、それを手に、庭に出て行った。
庭の片隅、日当たりの良い場所で、くまはちは、洗濯物を干していた。

「くまはちぃ」
「はい。……!!!」

くまはちは、真子が言葉を発する前に、真子の手にある封書に気が付き取り上げた。

「って、何?? くまはちのだったん?」
「その……今朝、河川敷で顔見知りの女の子に頂きまして…」

ちょっぴり照れた雰囲気に、真子は優しい眼差しを向けた。

「モテモテだね。何が書いてあるん? ラブレターでしょぉ? 付き合ってくださいとか、
 連絡先は、ここです。連絡待ってますとか…? どうなぁん?」

意地悪っぽい目つきで、くまはちを見上げる。

「その通りです。ですが、私は…」
「剛一さん、小百合さん夫妻と同じ…って、言いたいん?」
「はい。それに、私は…」
「無理しないでよね」
「組長をお守りするのが、私の仕事。本来なら、こうしている事態、
 許されないことなのに…それなのに、私は…」
「私は? …ったくぅ、いっつも言うてるやんかぁ。気にするなって。私の流儀は、
 そうじゃないって。それは、父の代で終わったの。私は、くまはちが
 好きなように、そして、思うように生きて欲しいんだから。解ってるでしょぉ?」

真子が膨れっ面になる。

「はい。ありがたい言葉。感無量です。しかし、私の好きな生き方は、
 阿山真子様をお守りすること。そして、共に生きていくことです」
「私が、結婚したら、その相手も守る、そして、子供が出来たら、子供もでしょ?
 くまはちの時間が減っていくよ。それでも…」
「それでもいいんです」

くまはちは、真子の言葉を遮ってまで強く言った。

「…くまはち…」

思わず寂しそうな表情をする真子に、くまはちは、言い過ぎたと反省する。

「すみません。組長のお言葉、大切にしたいんです。努力してます。
 自分の時間を作ろうと…ですが、やはり、身に付いたものは…」
「でも、昔と比べると、かなり変わったよ。くまはちの自分の時間が増えたでしょ?」
「そうですね。ありがとうございます」
「ねぇ、くまはち」

真子は静かに呼んだ。

「はい」
「その…女の子と付き合うん?」
「この女の子には、申し訳ないんですが、付き合うことは致しません。
 ただ、時々逢ってお話をするだけです。お兄さんとして慕っている
 そんな感じでしたから」
「女の子は、そう思ってないかもよぉ」

ニヤニヤと笑う真子に、くまはちは、戸惑っていた。



お昼ご飯の片づけを終えたくまはちは、リビングに顔を出す。真子が、AYAMAの二本目の試作品をしていると思った、くまはち。

「組長……って、そんなとこで眠るのは…」

そう言って、くまはちは、真子の側に跪き、優しく声を掛ける。

「組長、眠るのでしたら、お部屋に」
「…ん……。ここで…いい」
「体壊します」
「それでもいいよぉ」

寝ぼけ眼で、くまはちを見る真子は、くまはちの胸ぐらを掴んだ。

「く、組長?!」
「ねぇえぇ、抱く?」

真子の言葉とは言えない。いきなりの言葉に、くまはちは、思わず腰が引ける。しかし、真子に引き寄せられた。

「組長、そ、それは…」
「言ったやんかぁ。抱けと言われたら抱くって…。私の命令は絶対だって…」
「今のお言葉は命令では…」
「じゃぁ、抱けぇ!」
「できません!」
「くまはちぃ~」
「その…私は…」

冷や汗が頬を伝う…。
真子が、かばっと起きあがり、くまはちの服をめくり上げた。
腹部には、ガーゼが当てられていた。

や、やばいっ!! ばれた…。

真子の目が、いきなり五代目の雰囲気を醸し出す。

「…やっぱりなぁ」
「軽く切られただけです」
「縫ったやろ?」
「五針ほど」
「ったくぅ~」

真子は、くまはちの服から手を離す。くまはちは、慌てて服を整えた。

「どうも様子がおかしいと思ったの」
「…もしかして、朝、私を待っていたのは、これを確かめる為ですか?」
「そう。ぺんこうに聞いても、むかいんに聞いても…まさちんもだよ。誰も
 教えてくれなかった。それなら、自分で…そう思ったから、まさちんを
 追い出したんだ」
「まさか…」

真子の行動と言葉、そして、まさちんの動きを考えると、簡単に出てくる応え。

「虎石さんと竜見さんも一緒だからね。…きつぅぅぅく怒っておいたから」
「申し訳御座いませんでした」
「油断するから。相手は、今まで以上に恐ろしいんだからね。気を付けてよ。
 …くまはちに、もしもの事があったら、…私……」

真子は、それ以上何も言わなかったが、くまはちには解っていた。

もしもの事があったら……。






八造は、父親の前に姿勢を正して座っていた。

「これから、お前が仕えることになる人に会う。知っての通り、
 真子お嬢様だ。…先日、ちさと姐さんが、亡くなった。
 そのことで、今まで側に居た小島親子は、別の仕事で忙しくなる。
 あの親子は、情報に関しては、かなりの腕を持っているからな。
 四代目が、その方面をさせるつもりらしい」
「はい」
「八造は、真子お嬢様をお守りする仕事に就く。いいな」
「はっ」
「真子お嬢様は、六歳になった。真北という男が、教育係をしていたが、
 その真北も忙しいんでな、ガードの仕事以外に、教育も兼ねることに
 なるんだが…八造。お前なら、出来るよな。」
「容易いことです。学問も高校までなら、大丈夫です。後は、自分で
 学んでいきます」
「それなら、安心だ。明後日、顔を合わせに行く。そして、その日から、お前は
 この家の敷居を二度と跨げない。お前が、真子お嬢様から、クビだと
 言われる、その日までだ。…だから、兄弟達とも、顔を合わせるのは、
 明日までだ」
「心得ております」
「解らない事があれば、俺を頼っても良い。だがな、兄弟だけは、
 例え、本部の近くで会おうとも、他人を装え。お前が生きていく
 世界では必要なことだからな。お前を狙う為に、兄弟を囮にする
 奴らも居る。その為だ。…剛一から、奪った仕事だ。それくらい
 誇りを持って、生きていけ」
「はっ」

八造は、深々と頭を下げていた。

「ところで、八造」

声の調子が、少し和らいだ。八造は、顔を上げる。

「はい」
「あの一撃に、何を込めた?」
「…込めたと言いますと…?」
「いつもなら、寸前で止める拳。それを、剛一に思いっきり向けただろ。
 それも、何かの想いを込めて。あの時だけは、お前の優しさを
 激しく感じたんだが…」
「気のせいですよ」
「そうか…」
「では、明後日まで、好きな時間を過ごします」
「あぁ」

八造は、一礼して、父親の部屋を出て行った。八造が去っていく足音を耳にしながら、父親は姿勢を崩した。

「お前の言う通り…息子を仕事に就かせるのは、嫌な気持ちだな。
 自分と同じ事をするかもしれない…。命を落とすかもしれない…。
 それが、俺たち猪熊家の誇りだが…それでも、やはり、慶造の言うとおり
 命を失うことは、嫌だよな。…お前を失ったことで、身にしみてるよ」

ふと眼差しが優しくなる。

「だけど…慶造の為に、この命を失うことは、躊躇わない…。それが、
 身に付いたものだからな…」

目を瞑る父親。側に誰かが居るかのように語りかけていた。

「もしもの事があったら…どうすればいい?」

何か強い想いに狩られたのか、父親は、うっすらと涙を浮かべていた。



明日に備えて、八造が、荷物をまとめている時だった。剛一が部屋へ入ってくる。

「八造」
「はい」
「明日か」
「はい。兄貴。今まで、本当にお世話になりました。ありがとうございます」

八造は、深々と頭を下げる。その八造の胸ぐらを剛一が掴み上げた。

「…あ、兄貴…」

鋭い眼光で、睨まれる八造は、剛一の考えが解らず、思わず口にした。

「…俺の仕事…取りやがって…。どういうつもりや?」
「あの仕事に生き甲斐を感じただけです。そして、兄貴に渡したくなくて」
「そんな思いで、あの拳か? …そう思えなかったけどなぁ。本当は、どうなんだ?」
「本当のことです」

剛一が、更に胸ぐらを掴み上げる。

「八造~っ」

低い声で剛一が言い、八造を壁に押しつけた。背中を強打した八造だが、顔を歪めることなく、剛一を見つめていた。

「兄貴、どうしたんですか?」
「本音を言えっ!」
「ですから、それが、本音ですよ。俺は、やりたくなっただけです!」
「馬鹿がぁっ!」

剛一は、八造の体を床に放り投げる形で、手を離す。床を滑る八造は、素早く立ち上がる。

「俺が、阿山真子お嬢様をお守りする。その仕事をしたいだけです。
 その思いを、あの拳に…」
「俺の事を考えただけだろが!」
「兄貴っ!」

剛一の拳が、八造の腹部へ突き刺さったかに思えたが、八造は簡単にそれを手で受け止めていた。

「八造。俺と小百合さんのこと…考えたんだろ。どうなんだ? …隠すなよ。
 もう、今日限りで、俺とも話せないんだろ…。顔を見ても他人だろが。
 こうして、一緒に居られる時間は、あと少しだろ? 寂しいだろ? お前の
 本当の気持ちを知ってからでないと、見送れない。だから、八造。
 教えてくれよ。…なぜ、お前は…」
「兄貴は、人望があります。それは、兄貴達だけじゃなく、小百合さんや
 そのご家族、そして、友人達…。その絆を切って欲しくないんです。
 大切な絆。…俺には、友人も、好きな女性も居ません。親父や
 兄貴達…家族だけです。…それなら、心に留めるだけで…いい。
 誰も辛い思いは、しなくて済む。小百合さんに、お袋のような
 想いをして欲しくない。兄貴は大切な方なんですから」

八造の言葉に、剛一は何かに気付く。

「お前は、一生、所帯を持たないつもりか?」
「解りません。今は、まだ、そんなことまで考えられません。真子お嬢様の
 お言葉を待つ…それだけです」
「顔も見たことないのに、真子お嬢様に会って…」
「笑顔…あの笑顔を、……側で見たい…。それもあります」
「八造、お前…それは、御法度だぞ」
「解ってます。…五歳で、母を失ったんですよ。そのことで、もしかしたら…」
「八造のように、寂しそうにしてるかもしれない…?」
「はい。…命だけでなく、心もお守りしたい。…そういう想いだけで、
 仕事に就くことは、いけませんか?」
「…その想いが強いなら、俺は、心おきなく、お前に譲れる」
「兄貴…」
「お前の優しさ…真子お嬢様は、お解りになるかな…」
「それは、まだ、解らないことです」

剛一は、八造を腕の中に包み込んだ。

「がんばれよ。俺の分までな…」
「自信、ありますから」
「そうだろうな」
「兄貴」
「ん?」
「ありがとう。お幸せに」
「小百合さんにも、伝えておくよ。お前の…優しさを」
「照れます」

二人の様子を、廊下で伺っていた父親は、そっと去っていった。
そして、次の日、真子と初めて顔を合わせた八造は、本部近くの公園で、同じボディーガードの小島栄三と一悶着を起こしたのだった…。

「一日目から、波乱ですね…すみませんでした」

猪熊は、慶造に頭を下げていた。

「気にするなって何度言ったら解る? 拳にするか?」
「遠慮します」
「それにしても、お前の育て方…解らないな」
「剛一も関わってますよ」
「ったく。…真子のこと…本当に頼んだぞ」
「はっ」
「で、どこまで、凄腕なんだ? こっちは?」

慶造は、小指を立てている。

「慶造…お前なぁ、あいつは、まだ、十六だ。早すぎる」
「あほかぁ、お前は、十二だったろ?」
「うぅるぅさぁい。お前は……」

そこまで、口にして、猪熊は、言葉を噤んだ。

「俺は…ちさとが、最初さ」

微笑んだ慶造だが、その笑みには、哀しみが未だ、含まれていた。

「癒える日が来るのか?」
「俺より…真子だろうな…。…真子を巻き込む形になってしまったよ」
「真北さんに任せるつもりだったろが。何故止めた?」
「…大切な娘を、あんな奴に任せられないからな。…刑事だぞ。
 俺たちよりも、家族を犠牲にするかもしれないだろ?」
「そうだよなぁ。特殊任務の立場、解らないもんな…何をするのか」
「あぁ。…せめて、側に…真子を側に置いておきたいだけだ」
「……お前なぁ、父親だろ! その言い方、やめろ」
「そうだな…すまん」

えらく素直な慶造だった。

慶造と猪熊、そして、真北が廊下を歩いていく。ふと見つめる先に、真子と八造の姿があった。複雑な心境で見つめる猪熊とは裏腹に、これからの二人を楽しみにしている慶造だった。






くまはちは、AYAMAの試作品を終えた。エンドロールが流れる中、資料に不足分と手直し分を書き込んでいく。自分がもたれるソファでは、タオルケットに包まれた真子が、気持ちよさそうに眠っていた。

「くまはちぃ~。あほぉ」

真子の寝言だった。
くまはちは、名前を呼ばれて、すぐに反応したが、その後の言葉に、肩の力が抜けていた。

「寝言で、怒らないでください、組長」

優しく微笑むくまはちは、真子に振り返り、タオルケットを掛け直す。

「くまはち…」
「はい」

またしても、真子の寝言に反応する。
真子は微笑んでいる。

「ったく…」
「…ありがと…」

真子が、呟いた。その言葉で、くまはちは、思わず……。

真子に唇を寄せてしまった。

し、し、しまった……。

くまはちは、慌てて真子から離れ、試作品の片づけに集中する。
時刻は、午後の四時。
真子が自宅に居る時に限って、早めに帰宅する男は、今頃、職場を出た所だろう。

早く帰って来いぃ~、俺が、耐えられないっ!

猪熊家・八男の猪熊八造。真子の呼び名は『くまはち』。
彼の思いは、未だに、秘められいる……。


(2003.9.14 UP 改訂版2016.5.22 UP)




<著者から>
くまはちのお話です。時期は、AYビルで、剛一との出逢いがあり、その後、真子の記憶が戻った頃のものです。
くまはちの剛一への想い、そして、仕事への誇り、真子への想い。
それぞれは、未だに秘められた感じですが、脇役のくまはちも欠かせない人物です。
二枚目のくまはち。
かっこよくて、優しくて、自分を守ってくれるお兄さんが居てくれるだけで、嬉しくなっちゃいます。
くまはち! ボディーガードとしての想いだけなのかぁ?
もしかして………。(著者、鋭い視線を感じ、それ以上、何も言えず…)




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 人の痛みがわからない方は、申し訳御座いませんが、お引き取り下さいませ。
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