任侠ファンタジー(?)小説・組員サイド任侠物語
『光と笑顔の新た世界〜真子を支える男達の心と絆〜

第四部 『新たな世界』

第二十一話 真北家の家族旅行・感謝して!

朝六時。
一晩中、話し込んでいた男達は、それぞれの行動に移っていた。くまはちは、トレーニングへ、まさちんは、シャワー室で汗を流している。真北は、朝の打ち合わせに出掛ける準備中。

「怪我は?」

ぺんこうが、気になるのか、尋ねていた。

「お前ら、俺が割り込まなかったら、真子ちゃん蹴ってたよな」
「恐らく……。すみませんでした…」
「…の割には、ガッツポーズ…?」
「日頃のうっぷん晴らし…って、……冗談です」

真北が、睨む…。

「…能力だよ。真子ちゃんの」
「えっ?」
「ばれないように、そっとな。恐らく、口づけの時だろ。真子ちゃんが
 撫でただけで、あの痛さが直ぐに消えるはずないもんな。ったく、
 いつになったら、打ち明けてくれるんやろな」
「一生、隠し通すでしょうね」
「そうだろうな。…俺の教育、間違ったかな…」
「あなただからこそ、今の組長があるんですよ」

ぺんこうの言葉には、優しさが溢れていた。

「ありがとな。ほな、行って来るよ。8時までには、戻る。それまで、
 真子ちゃん…組長を起こすなよ。軽い怪我でも、能力は能力だからな。
 そして…蹴り合うなよ…」
「むかいんが、いますから」
「むかいんに、負担かけるな!」

真北は、そう言って、部屋を出ていった。ぺんこうは、少しなまった体を動かしていた。シャワー室から、まさちんが出てきた。

「真北さんは?」
「仕事」
「あの人はぁ。仕事好きなんだからなぁ。組長には、休暇と言っておきながら」
「それが、あの人だからね」
「昔っからか?」
「そうだよ」

少しふてくされたような言い方をするぺんこう。そんなぺんこうの頭をまさちんは、くしゃくしゃと撫でた。

「ったく、お前に、そう扱われると、プライドが傷つく」

ぺんこうは、まさちんの手を払いのける。

「そういうお前こそ。俺を子供扱いしとるやないかぁ」
「俺にとったら、子供やないけ」
「なんやとぉ〜〜!」
「それは、こっちの台詞ぅ〜〜!」

まさちんとぺんこう。二人は、ソファの上で上になり、下になり…とっくみあいをしている。

「……あっ!!!」
「…………すまん…観なかったことにしとく」

目を覚まし、寝室から出てきたむかいんは、二人の状態を見て、目を反らし、何も見なかったという感じで、寝室へ戻っていった。

「むかいん!!! 勘違いやぁ!」

ぺんこうとまさちんが、同時に叫ぶ。
むかいんは、ドアの向こうに立ったまま、笑いを必死で堪えていた。




真北は、一枚の用紙を見つめていた。眉間にしわが寄っている……。

「…駄目ですか?」

恐縮そうに言うのは、ランドマニアに扮する私服刑事。
真北は、その刑事に、ちらりと目線を移した。

「土産屋は、ゲート付近だけらしいからなぁ。それに、ランド内でしか
 売ってない限定品を目当てにしてるようだからね。…しかし、これは
 他の客に、迷惑やろ…」
「ほとんどが、私たちですよ…」
「…なんでや?」
「…あの、真北さんが、召集したんですが……すみません…」

真北が、ぎろりと睨んでいた。

「…冗談や。今日は、半日。あとは、本部に帰るだけだから。
 二日半、ありがとな…」

真北は、優しく微笑む。

「私たちも、楽しんで仕事出来ました。残り半日。頑張ります!!」

ランドマニアに扮する刑事は、敬礼する。真北は、照れたように刑事の敬礼する腕を払って、その場を去っていった。

時は、朝の七時四十五分。
お寝坊さんの真子は、まだ、眠っていた。寝室のドアが静かに開き、誰かが入ってくる。その人物は、そっと真子に近づき、耳元でささやいた。

「組長ぅ〜そろそろ起きてくださいねぇ」
「ん……」

寝ぼけ眼でささやく人物を見る真子。

「ぺんこうぅ〜。もう少し、寝る〜」
「だと思いましたよ。今、七時四十五分です。八時には起きて来て下さいね」
「う…ん……」

真子は、眠る…。
ぺんこうは、優しい眼差しで真子を見つめた後、静かに寝室を出ていった。
別室には、男達が荷物をまとめている姿がある。

「組長の荷物は?」

既にまとめ終わっているむかいんが、ぺんこうに尋ねた。

「俺がしとくよ」

ぺんこうも、自分の荷物をまとめはじめる。

「真北さんも、くまはちも、既に終わってるってことか。旅慣れた者は
 やること早いなぁ」

ぺんこうは、目線を移す。そして、部屋を散らかすかのような状態で、あたふたしているまさちんを見て、言葉を失ったような表情になった。

「俺がやろか?」

むかいんが、業を煮やして声を掛けた。

「大丈夫や。組長が起きてくるまでには、片づいとる」
「土産物は、どうすんねん?」

ぺんこうが尋ねる。

「本部のは、持って帰ると言ってたよ。大阪の分は、ビルにでも
 送るんちゃうかなぁ。後で組長に聞いてみるよ」
「それなら…」

ぺんこうは、そう言いながら自分の荷物をまとめ終わり、真子の荷物をまとめはじめた。

「ったく、いつまで経っても、人任せなんだから…もっと大人になって
 欲しいよぉ。…育て方…間違ったかなぁ…わぁ!!!!!」

ペタッ!!

ぺんこうは、前のめりに倒れ、床に大の字になっていた…。

「ったくぅ、言うことは、そればっかりやなぁ〜」

真子が、寝室から出てきた途端、ぺんこうの言葉に反応して、後ろから、蹴りを入れていた。

「…組長ぅ〜、後ろからの攻撃は、駄目だと申してるでしょう!」
「私が、おらんかったら、いっつも、そうやって悪口?」
「悪口ではありませんよ、本当のことでしょう?」

ぺんこうは、体を起こしながら、真子に言った。

「それにしても、ひどすぎぃ〜」
「突然蹴る方が、ひどいですよ!」
「いいやんかぁ!」
「よくありません!!!」

ぺんこうの声以外に、誰かの声が…。

「!!!!!! …ごめんなさい……」

ぺんこうの言葉と重なるように言ったのは、部屋へ戻ってきた真北だった。真北の声にいち早く反応する真子は、素直に謝ってしまう。ぺんこうたちは、一斉に真子へ振り返った。

「…素直に…」
「えっ?!」

真子は、まさちんの言葉の意味を理解出来ないのか、首を傾げる。
真子が素直な時は、体調が悪い時。

そう言えば、昨夜、青い光を……。

「組長、今日は、お土産屋さんを廻るだけですよね?」

真北がその場の雰囲気を変えるかのように、尋ねた。

「うん。たっくさん買うよぉ」

真子の目が輝き始める。

「何時に迎えに来させればいいですか?」
「お昼ご飯、どうする?」

と言いながら、真子はむかいんを見つめた。

「本部」

むかいんは、短く応える。

「長いこと料理せんかったら、うずうずしてる?」

真子は、笑顔でむかいんに尋ねた。

「はい。食材を持ったら、腕が勝手に動きそうです」
「じゃぁ、十一時にランド前」
「そんなに早く…大丈夫ですか?」
「…お昼頃に…する…」

真子は、上目遣いで真北に言った。

「わかりました」

優しく微笑む真北の目線は一カ所で凝視する…。真子も真北に合わせるように一点を見つめた。

「……まさちん、まだ片づけ終わらないん?」
「すみません…」
「ったくぅ〜」

そう言って、真子は、まさちんの手伝いをはじめた。

「…組長、まさちんのは、いいですから、ご自分のをお願いします…」

ぺんこうが、真子の襟首を掴んで、そう言った。真子は、ちらりと舌を出し、

「はぁい」

かわいく返事をした。





「次は、あっこ!!」
「はい…」

荷物を預けた真子達。
真子を先頭に、まさちん、ぺんこう、むかいん、くまはち、そして、真北が、アーケード内に並ぶお土産屋さんをあちこちと移動していた。移動の度に、まさちんの手にお土産の袋が増えていく。

「…あの…、これ以上、持てません!!」
「まだ、持てるぅ!!はい!」

真子は、新たな袋をまさちんに渡した。
そんな二人の仕草に、笑いを堪えている真北たち。

「ありゃぁ、昨日の罰やな…」
「意外と根に持つタイプだったんだ…」
「誰かに似て……」

くまはち、むかいん、ぺんこうが、それぞれ、呟いて、一人の人物を見つめた。

「…なんや?」
「いいえ、何も…」

声を揃えて応える三人に、真北は、首を傾げていた。

「ねぇ、明美さんやひとみさんたちや水木さんたちには、何がいいかなぁ」
「…何がいいかなぁ…って、これは、明美さんたちの分じゃないんですか?」
「私の分」
「…………。お土産というのは、自分の分じゃなくて…」
「いいやんかぁ」

真子は、ふくれっ面。



真子は、ゲートに一番近い店の前で立ち止まる。そして、何かを数えはじめた。

「どうされました?」

そんな真子に、両手いっぱいに袋を持ったまさちんが、尋ねた。

「どれだけ買えばいいん?」
「えっとぉ…、最低でも20ですね」
「んー…。くまはちぃ、荷物番しててぇ。ここには、まさちんと入るから」
「はい。ごゆっくりと」

くまはちは、まさちんから荷物を受け取り、人通りの少ない場所へと移動した。そして、店に入る客たちを観察するような感じで見つめ始める。真北が、くまはちの側へとやって来た。

「ご一緒なさらないんですか?」
「あぁ。俺には不向きだろ。くまはちは、いいのか?」
「私にも、不向きですよ」
「…どうだった?」
「楽しみましたよ。ありがとうございます」
「俺も、久しぶりに楽しんだよ。何年ぶりかなぁ。こうして、真子ちゃんと
 楽しい時間を過ごしたのは」
「まだ、ちさとさんがおられた頃…でしたよね。話を聞いたことあります。
 組長、嬉しそうに語っておりましたよ」
「…俺のこと、変に言ってなかったか?」
「秘密です」

くまはちは、微笑んでいた。

「お前ら、俺に隠し事、多すぎや。全部聞き出したるぞ。覚悟しとけよ」
「組長命令ですよ」
「…俺は、本気やぞ…」

真北は、くまはちを睨み上げる。その目に少し恐怖を覚えるくまはちは、慌てて目を反らした。



真子は、お菓子類を売っている場所の前で、悩んでいた。まさちんが店員と一緒に真子の側へやって来る。

「かなりの数になるんですけど、一カ所に送って頂くことできますか?」
「はい。可能ですよ。どの商品を、どれだけでしょうか?」
「どれですか?」

まさちんが、真子に尋ねた。

「…これ」

真子が指差したもの。それは、真子のお気に入りアヒルのキャラクターがデザインされている箱。中にクリームが入った小さなパフケーキ。真子の目線は、そこから離れない…。

「これ30個を大阪に、20個と1個はお持ち帰りでお願いします」
「かしこまりました。送り状を用意いたしますので、こちらに
 来て下さい」

店員は、何かをメモしながら、まさちんを奥の部屋へ案内した。

「ぺんこう、むかいん、頼むぞぉ」
「はいよぉ」

少し離れたところで、商品を見ていたぺんこうとむかいんは、軽く返事をして、真子に近づいた。

「何かいいものあった?」

真子が二人に尋ねる。

「たくさんありすぎですよ。迷います」
「理子は、ねずみの女の子が好きだよ」
「すでに買ってますよ」

むかいんは、優しく微笑んでいた。

「早いなぁ。ぺんこうは?」
「私は、研修ということで、休みを取ってますから、お土産買うと、
 生徒達にどやされますよ」
「そっか。仕事って言ってたっけ…。ほんと、悪い教師やなぁ〜…ふにぃ!!」

真子は、ぺんこうに頬を引っ張られていた。

「言っていいことと、悪いことありますよぉ!! ったく、この口はぁ」
「ふにぃ〜ぐぉみぇんにゃしゅわぁいぃ〜」
「よろしい」

ぺんこうは、真子から手を離した。真子は、少しふくれっ面になりながら、頬をさすっていた。

「あっ」

真子は、何かに気が付いて、走り出す。

「駄目ですよ、急にぃ!!」

ぺんこうとむかいんは、真子を追いかけた。真子は、奥のカウンターに走り寄っていた。そこには、たくさんのネクタイが陳列されている。

「ね、ね、これどう?」
「誰にですか?」
「内緒ぉ」

少し意地悪っぽい言い方をしながら、真子は、ネクタイを一つ一つ念入りに見ていく。

「…かわいいねぇ、アヒルキャラぁ」
「は、はぁ、まぁ…」

むかいんとぺんこうは、同時に返事をした。真子は、嬉しそうにネクタイを選びはじめた。
そんな真子をただ、見つめるだけの二人。
真子は、あまり派手ではないが、アヒルキャラが小さくたくさんプリントされているものや、一つだけプリントされているものなど、5種類のネクタイを手にとって、レジへ歩み寄った。店員と笑顔で会話をしながら、お金を払う真子を見つめるむかいんとぺんこうは、ほんわかムード。その眼差しは、妹思いの兄のよう…。

「で、どうするんや?」

むかいんが、ぺんこうに言った。

「ん? …そら、今までと変わらんよ。俺の優秀な教え子だ」
「にしては、眼差しが、恋人向けやぞぉ。やっぱし、昨夜は、あのまま
 ほっといた方がよかったか?」

ぺんこうは、ゆっくりとむかいんに振り返り、睨み付ける。

「…そうやで…」
「本音かい…」
「むかいんが、その気にならないのが、不思議だよ。くまはちだって、
 今、ふらつきかけてるぞぉ」
「俺は、料理人だからな」
「料理にしか、興味ない…ってことか」
「俺の料理で、笑顔になれば、それだけで、充分だよ」
「うらやましいよ」

ぺんこうは、小声で言った。真子が、小さな袋を五つ持って、ぺんこうとむかいんの所へ戻ってくる。

「お待たせぇ。…まさちんは、まだなん?」
「遅いですねぇ」

ぺんこうが、応えた。

「まさか、また、店員さんをくどいてるとか…。ったくぅ、あの癖は、
 治らないのかなぁ。…困ったねぇ」
「絶対に、治らないでしょうね」
「置いて帰りましょうか?」
「そうしよか」

真子、むかいん、ぺんこうは、まさちんが居るだろう場所に目をやった。
その目は、段々と、呆れたような感じに変化する…。
三人が思っていた通り、まさちんは、店員と笑顔で話し込んでいた。
店員の表情は、照れたような感じ…。
まさちんが、急に振り返った。
その表情は、焦った感じ…。

「…オーラ…でてます…」

ぺんこうが、真子に呟いた。
その通り。
まさちんを睨む真子は、怒りの形相。
こめかみがピクピクとしている…。
まさちんは、慌てたように店員に挨拶をして、真子達に走り寄ってきた。

「お待たせ致しました」
「ありがと。何時、着くん?」
「あさってにしていただきました」
「あさってに帰るとは、限らないのにぃ」
「本部に戻りましたら、ビルに連絡しておきます」
「うん。よろしく。まさちんは、買う物ないん?」
「はい」
「電話番号は?」
「受け取りませんでした」
「じゃぁ、出ようか」
「はい」

真子とまさちんは、さらぁっと話し終えた。
会話の中には、今にも真子の鉄拳が!というものも含まれているにも関わらず、真子は、あっけらかんとした感じ。ぺんこうとむかいんは、狐につままれたような表情で、真子の後を追って、店を出ていった。

「お待たせぇ〜。って、真北さん、いいの?」

真子は、店を指差しながら尋ねた。

「はい。たくさん買いましたね」

真北は、真子の手に持っている袋を見ながら、優しく語りかけた。

「うん。…集まってぇ〜!!」

真子は、真北たちに手招きして、近寄っていった。真北達は、真子の次の行動を予測できないまま、集まってくる。

「真北さん、くまはち、ぺんこう、むかいん、そして、まさちん」
「はい」

五人は、同時に返事をする。

「この三日間、楽しい時間を過ごせました。ありがとうございました」

真子は、深々と頭を下げた。
きょとんとしている真北たち。

「これは、私からのお礼です。こんなことしか、できないけど…」

真子は、照れたような表情で手にした袋を一人一人に手渡した。

「はい、まさちん。これは、ぺんこう。これは、むかいん。そして、くまはち」

真子の突然の行動に、ただ、手を差し出して、受け取る四人。
真子は、真北の前で手を止め、見つめた。

「ったく、私には、休暇を取ったと言っておきながらぁ、ランド内の
 私の周りに、たっくさん配備させてたんだからぁ」

真子は、ふくれっ面。

「すみません…」
「ありがとう。安心して楽しめたよ。はい」

真子は、とびっきりの笑顔を真北に向け、袋を手渡した。

「ありがとうございます……」

声を詰まらせながら、真子に言う真北。少し目が潤んでいたことは、言うまでもない。

「ほんとはね、みなさんにもお礼したいんだけど、あまりの多さに
 困ってるの…。…気が付いてるってこと、内緒の方がいい?」

真子に小声で尋ねられた真北は、ただ、軽く頷くだけだった。

「じゃぁ、帰ろっか!」
「えぇ。ゲートの前に来るように言ってありますので」
「はぁい」

真子は、一歩踏みだして、振り返った。

「みなさん! ありがとうございました!!」

真子は、声を張り上げ、深々と頭を下げた。
顔を上げ、ざぁっとアーケード内を笑顔で見渡し、きびすを返して、ゲートへ向かっていく。
アーケード内に居る私服刑事達は、真子の突然の行動に、驚いて、その場に立ちつくすだけだった。ゲートに向かう真子の後ろ姿をいつまでも見届ける刑事達。真北は、後ろ手に手を挙げて、仲間に挨拶をした。
その途端、刑事達は、真北の後ろ姿に向かって、一斉に敬礼をする。
アーケード内に居た人たち、全員が、敬礼をしていた……。






阿山組本部。
旅行から帰ってきた午後三時。
むかいんの料理を食した後、真子のくつろぎの場所では、真子を囲むように、まさちん、むかいん、くまはち、ぺんこうが、のんびりと過ごしていた。小さなテーブルの上には、アヒルキャラのお菓子の箱が一つ置いてあった。それに手を伸ばしながら、色々と楽しい話に花を咲かせている。

「こうして、みんなでのんびりするのって、次はいつだろねぇ」

真子が、しみじみと言った。

「組長、若さを感じられませんよぉ」

まさちんが、呟くように言うと、

ドカッ!

真子の蹴りが、まさちんの腹部に入った。

「すみません…」
「ぺんこうは、明日から仕事?」
「明日まで休みですよ」
「ほな、一緒に帰るん?」
「そうですよ」
「俺は、嫌やなぁ」

まさちんが、横やりを入れる…。
その後は、もちろん……。

「てめぇなぁ、一言多い!!」
「じゃかぁしぃ!! この不良教師がぁ!」
「なんやとぉ〜?」
「なんやぁ?」

ガシュ!!!!

ぺんこうとまさちんは、お互いの胸ぐらを掴みあげ……。

「もぉ!! いい加減にしなさぁぁぁい!!!!」

真子の雄叫びが本部内に響き渡る…。
真子を交えて、まさちんとぺんこうが、もめはじめる。それを停めるむかいんとくまはち。


真北は、自分の部屋に居た。その窓からは、真子のくつろぎの場所を見ることが出来る。

「ったく、あの二人は、いっつもいっつも…」

困ったような表情で真子たちを見つめる真北は、机の引き出しから、何かを取りだした。
それは、ちさとの写真だった。

「ちさとさん…。本当に申し訳ない。あなたの御意志に反して、
 真子ちゃんをやくざの世界にどっぷりと浸からせてしまった。
 ……だけど、あいつらを見ていると、やくざに見えないな。
 真子ちゃんの笑顔が、そうさせるんですよね…」

真北は、優しく微笑み、何かを思いだしているような眼差しに変わる。

「やくざの世界に荒波を起こしてまで、こうして生きている
 真子ちゃんを見ていると……これで良かったんだと思います。
 あの能力もすっかりと消えてしまったと…真子ちゃんは、
 私に、そう思わせておりますけどね…」

窓の外に目をやり、真子を見つめた。
真子の笑顔が輝いていた。

「これ以上、使わないことを望むばかりです」

真北は、何かを手に持って、それを見つめる。
それは、真子からランド内で手渡されたネクタイだった。
アヒルキャラがネクタイの先に刺繍されているもの。少し派手めな色だった。

「それに…。だんだん、ちさとさんに似てきましたよ。
 優しさに、笑顔に…そして、選ぶものまで。あなたと過ごした時間は
 少ないにも関わらず…。…これからの成長、益々楽しみですよ」

真北は、父親の様に微笑んでいた。
机の引き出しを開けた。そこには、透明のフィルムが貼られた箱に入っているネクタイが、隠すように置かれていた。その箱の横に、ちさとの写真をそっと置く。
引き出しの中のネクタイは、真子からもらったネクタイと全く同じ色。
ネクタイの先には、猫が刺繍されていた。
真北は、嬉しそうな表情で、引き出しを閉める。そして、真子にもらったネクタイを机の上のとある位置に、そっと置いた。
一呼吸置いた後、部屋を出ていった。

『じゃかましぃ!!! お前ら、ここでも、同じことすんな!!』
『すみません!!』
『だって、まさちんとぺんこうがぁ〜』
『組長! だってもへったくれもありません!』

真北の怒鳴り声が聞こえる真北の部屋。
机の上には、真子からもらったネクタイと、その横に、ランド内の水系乗り物の時に真子が購入した写真が飾られていた。


幸せを感じた時間。
こんな時間が続けばいい…そう思いながら、真北は真子達を見つめていた。


その日の夕方。
一本の電話で、真北は、現実に引き戻された。

「組長、急用が出来ましたので、先に大阪へ」

夕食前に真子の部屋へ尋ねる真北。

「真北さん、ゆっくりできないね」
「その方が、私の体に合ってますから」
「無茶せんといてやぁ」
「くまはちも一緒に、よろしいですか?」
「うん。まさちんとぺんこうとむかいんが居るから大丈夫だよ」

そう言いながらも、真子は、少し寂しそうな表情をしている。真北は、そっと真子を抱きしめた。

「昔を思い出しますよ。私が、出掛けると言ったら、必ずそのような
 表情をなさるんですから」
「寂しいもん」
「昔は、長いこと留守にしましたけど、今は、直ぐに逢えますよ」

真北は、真子の頭を優しく撫でながら言った。

「…うん」
「では、お先です」
「気を付けてね…」
「組長も。二人を停めるのは、むかいんに任せてくださいね」
「そうするぅ」

真北は、真子に手を振って、部屋を去っていった。
真子は、ため息を付いて、ソファに腰を掛け、そして、横になって、眠りはじめた。
とても、幸せそうな顔をしている真子。恐らく、ランドでの事を想いだしているのだろう…。



緊迫した表情で、大阪に向かう真北とくまはちは、新幹線に乗り、席に座った。

「真北さん、急にどうされたんですか?」
「…………」

真北は、くまはちの質問に応えず、ポケットに手を突っ込んで、口を尖らせながら、窓の外を見つめるだけだった。



(2006.4.21 第四部 第二十一話 UP)



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※旧サイト連載期間:2005.6.15 〜 2006.8.30


※この物語は、どちゃん!オリジナルのものです。著作権はどちゃん!にあります。
※物語全てを著者に無断で、何かに掲載及び、使用することは、禁止しています。
※物語は、架空の物語です。物語内の登場人物名、場所、組織等は、実在のものとは全く関係ありません。
※物語内には、過激な表現や残酷な表現、大人の世界の表現があります。
 現実と架空の区別が付かない方、世間一般常識を間違って解釈している方、そして、
 人の痛みがわからない方は、申し訳御座いませんが、お引き取り下さいませ。
※尚、物語で主流となっているような組織団体を支持するものではありません。


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