任侠ファンタジー(?)小説・組員サイド任侠物語
『光と笑顔の新た世界〜真子を支える男達の心と絆〜

第四部 『新たな世界』
大人の世界の話が含まれます。
お子ちゃまには、まだ早いですよぉ〜!!


第三十三話 真子と水木の勝負 2

6日目。
まさちんは、真子がその日の仕事をしやすいようにと、書類をまとめていた。
しかし……。

「今日は、水木さんとですか??」

突拍子もない声を張り上げたまさちん。そして、寂しげな眼差しで水木を見た。

「大丈夫や。安心せぇや。俺と一緒やったら、お前も少しはゆっくりできるやろ」
「そうですけどね…」
「なんや、寂しいんか?」
「少し」
「2、3日くらい我慢せぇや」
「はぁ?」
「…冗談や」

水木とまさちんの会話に割り込んできたのは、真子だった。

「ミナミで調べることあるだけやん。いつも御免ねぇ、まさちんに仕事押しつけて」
「無茶だけはしないでくださいよぉ」
「はぁぁい」

真子は、水木と笑顔で事務室を出ていった。
ドアが閉まった途端、まさちんは、本当に、無茶苦茶寂しそうな表情をして、肩の力を思いっきり落としてしまった。




真子と水木は、一緒に水木組組事務所へ顔を出す。
珍しいコンビに組員達は、驚いていた。二人は、そのまま、組長室へと入っていく。
楽しく話し込む二人。その声を耳にしながら、組員がお茶を持ってくる。

「ありがとう」

真子が優しく声を掛けると、組員は、耳を赤らめた。

「…組長は、オレンジジュースやけどなぁ」

水木が呟くように言うと、組員の顔色が青くなっていく。

「お茶も好きやで! 高級茶?」

真子の言葉に、組員は頷き、

「親分よりも」

意味不明な返事をしてしまう。
それには、真子は笑っていた。

「失礼しました」

組員が深々と頭を下げて組長室を出て行った。

「俺より高級茶って……」

水木は、真子に差し出されたお茶と自分の前にあるお茶を一口ずつ口に含んだ。

「……ほんまや…あいつらぁ〜」
「ええやんかぁ」

と言いながら、真子はお茶を飲み干した。

「……湯飲み…一つで、ええのになぁ」

水木が呟き、そして、真子を見つめる。
真子の隣に座り直し、真子を押し倒した。
突然の行動だが、真子は拒むこともせず、ただ、身を任せるように、目を瞑った。
組長室内に、甘い息づかいが聞こえ始める…。




「失礼します」

そう言って、組長室のドアを開けて入ってきたのは、西田だった。

「…なんや?」

振り返る水木を観た西田は、衝撃のあまり、その場に立ちつくす。
ソファに寝転ぶ水木は、上半身裸。その水木の下にいるのは、真子だった。真子の着ていた服は、床に落ちている。

「…ドア、閉めろ」

西田は、水木の言葉に素直に従った。

「何の用や?」
「そ、その…。水原社長がお見えです」
「待たせとけ。取り込み中や」
「…し、しかし、兄貴、それは…」

水木は、真子に目をやる。
真子は、困ったような眼差しで、西田を見つめた。

「黙っててね」

そう言って、真子は、微笑んだ。
西田は、真子の雰囲気が、いつもと違う事に気が付き、その場を出ようとドアノブに手を掛ける。

「西田」
「はい」

水木のドスの利いた声に反応する西田は、ビシッと立っていた。

「済むまで、誰も近寄らんように、見張っとけ」
「はい。…失礼します」

西田は、出ていった。そして、ドアの前に立ち、見張りを始めた。

「組長…気が逸れた。あとで続きを…」

水木は、真子に口づけをした後、服を着て、部屋を出ていった。
ドアの向こうに、水木と西田の声が聞こえた。それが、遠ざかっていく。
真子は、体を支えながら起き上がり、服を取り、身につけた。
西田が、そっと部屋へ入ってくる。

「…組長…。すみません」
「えらいとこ、観られてしまったね。気に…せんといてや」

そう言って、立ち上がった真子は、ふらつき、そのままソファに倒れ込んでしまった。

「組長!!」

驚いた西田は、真子に駆け寄った。真子は、何かを堪えているような表情をしていた。

「まさちんさん、お呼びします…」

真子は、西田の服を掴んだ。

「あかん…ええんや。…そんかわり、水木さんが、戻るまで、
 ここで寝かせてくれ…。寝てないんや…」

真子は、そのまま寝入ってしまった。西田は、部屋を出て、真子の為に掛ける物を持ってきた。そして、そっと真子に掛けようとした時だった。
服の隙間から見える真子の肌。
首筋から胸元に掛けて、無数のあざと引っ掻き傷がある事に気が付いた。

「えっ?」

西田は、ゆっくりと真子の服をめくっていく。背中にも同じ様なあざや傷があった。
西田は、ここ数日の水木の行動を思い出していた。
常に、真子を側に置いて、行動している。
脳裏に過ぎる、恐ろしい事。

まさか…兄貴…。

「…誰に手をつけとるんや!」

水木が戻ってきた。慌てて立ち上がる西田は、

「すんません!! 組長、眠いとおっしゃったので、布団を…」

そう応えた。

「にしては、手ぇつけてるんやないか。出ろ」

水木の威嚇に負け、西田は、慌てて部屋を出ていった。

「ふぅ〜」

水木はため息を付いて、真子の側に腰を下ろした。

「俺も、寝てないんやけどな」

そう言って水木は、真子の横に寝転び、真子を抱きしめながら、眠り始めた。
暫くして、西田が、部屋を覗き込む。
寄り添って寝る二人を見た西田は、何かを確信する…。



その頃、まさちんは、真子のために用意した組関係の仕事を仕上げていた。
いつも以上に細かくするまさちん。
それ程、没頭しないと、何かが爆発しそうな、そんな雰囲気だった。
本来なら、くまはちも手伝うのだが、もちろん、くまはちは、関西から離れている。

組長ぅ〜。まさか、遊んでるんじゃないでしょうね…。

という考えが過ぎった途端、まさちんの手が止まる。

「ふぅ……」

軽くため息を吐いて、デスクに俯せた。




昼過ぎ、真子と水木は、組事務所を出ていった。もちろん、二度、終わらせた後…。水木の車は、真子の自宅前で停まった。

「今日くらい、帰っておかな、やばいやろ。今、誰もおらんか。
 ほな、あがらせてもらうかな」
「それは、断る。家の中だと、ばれやすいから」
「そうやな。ほな、また。失礼します」

水木は、去っていった。
真子は、よたよたと歩きながら、自分の部屋へ入り、そのまま床で寝入ってしまった。


水木は、気になったのか戻ってきた。そして、真子の自宅前に車を停め、玄関に向かっていく。ドアノブに手を伸ばすと、鍵が開いていた。

「ったく、不用心だとあれ程…」

そう言いながら、真子の自宅に上がり込む水木。その足は二階の真子の部屋へと向かっていた。
真子の部屋のドアを開けると、真子は着替えもせず、ベッドに倒れていた。

「組長っ!」

水木は慌てて真子に駆け寄った。

やりすぎか…今日で六日目だもんな…。
しかし、組長……。

水木は、眠る真子に手を伸ばし、抱き寄せた。
真子の体が少し熱い。

熱が上がったのか?

気になった水木は、真子を抱かずに、ベッドに寝かしつけ、そして、懐の電話に手を伸ばした。





仕事をほとんど終えた昼過ぎ。まさちんは一本の電話を受ける。

「もしもしぃ。…なんですか?……えっ?…わかりました。すぐに戻ります」

まさちんは、慌てて事務室を出て、車に飛び乗り、猛スピードで駐車場を出ていった。




真子は、ふと目を覚ました。自分がベッドに寝ていることに驚いて、体を起こす。

「もう、起きたんか?」

真子は、その声の主を見て、体をベッドの隅へともっていく。

「なんもせぇへんて。ここで高ぶるわけないやろ。真北さんのにおいが
 する家の中でな…。しかし、組長、不用心すぎですよ。鍵開けっ放しで。
 まさちんに連絡しときましたから。もうすぐ帰ってくるでしょう」

ベッドの側に座る水木は、立ち上がり、服を整えた。

「…水木…さん…」
「ん? 別れのキスか?」
「…ちゃう…ありがと」
「…帰ってきたみたいやな。…しっかし、ビルからここまでって、30分で
 来れるか? まさちんも、無茶な運転しよるからのぉ。…駆け上がってるし…」

まさちんの足音が真子の部屋の前で停まり、ドアが開いた。

「組長…!! 水木さん」
「はや…」
「ありがとうございます。連絡」
「俺も悪いしな」
「えっ?」
「組長を連れ回し過ぎたんや」
「ったく、水木さんを連れ回したの間違いでしょ?」

まさちんは、真子に目をやり、優しく微笑んだ。

「熱は?」
「疲れただけ。眠れば大丈夫だと思うよ」
「安心しました」
「仕事終わったん?」
「明日に回します」
「あかんって。ちゃんと今日できるものは、今日にしとかんとぉ」

真子は、ふくれっ面になる。

「しますよぉ」

まさちんは、真子の側により、そっと寝かしつけ、布団を掛けた。

「部屋で仕事の続きしてますから、何か遭ったらお呼びくださいね」
「うん」
「水木さん、お世話になりました」
「俺は一向にかまへんで。ほな、組長、また明日」

水木は、まさちんに解らないように背を向け、真子にウインクをして、微笑んだ。

「気を付けてね、水木さん」

水木とまさちんは、真子の部屋を出ていった。

「うぐ…」

真子は、全身に少し痛みを感じ、体を丸くした。

「あと…三日と半日…。負けられへん…」

真子は、布団を握りしめながら、眠りに就いた。




7日目・朝。
まさちんは、真子の部屋を覗く。真子は、熟睡していた。

「ったく、お疲れなら、そう言って下さいね。昨日は、驚きましたよ。
 疲れで倒れただけだから、よかったものの…」

まさちんは、そっとドアを閉める。そして、電話を掛けた。

「地島です。すみません、今日の幹部会は、なしで…すみません、
 組長の体調が思わしくないので…」

まさちんは、項垂れたまんま、あちこちに電話を掛けていた。


真子は、昼過ぎに目を覚ます。
壁に手を突きながら少し重い体を支えて、リビングへと降りてきた。
誰も居ない…。
真子は、ゆっくりとキッチンへ歩き、冷蔵庫を開け、飲み物を手に取った。
飲み干した後、ため息を付いて、リビングのソファに腰をドカッと下ろす。
腕で目を隠すように覆い、ソファにもたれかかって、再び眠り始めた。

リビングに人の気配がする。真子は、おぼろげながらも、目を覚ます。

「組長」

真子は、背後からの声に驚き、身を伏せた。
真子に声を掛けたのは、部屋で仕事をしていたまさちんだった。

「こんなとこで寝てますと、体をこわしますよ」

まさちんは、そっと真子に手を差し出し、肩に手を置いて、真子を起こした。
真子の体は、少し震えていた。

「…組長?」

真子の体調が思わしくないと思ったのか、まさちんは、真子を抱きかかえる。

「今日は、一日お部屋に」
「…だ、大丈夫だよぉ」

真子は、平静を装うが、まさちんには、それが、ぎこちなく感じていた。部屋に向かいながら、

「組長、何か、隠し事してませんか?」

静かに尋ねてみた。

「なんで?」
「ここ数日…組長の雰囲気が変わったように思うんですが…」
「…そう? …桜姐さんの事件が遭ったからかな…」

まさちんは、真子の部屋の前で脚を停め、真剣な眼差しで、腕の中にいる真子を見つめた。

「な、なに?」

真子の体が強張る。

「…いいえ、何も…」

まさちんは、真子の部屋のドアを開け、部屋へ入っていった。そして、真子をベッドにそっと座らせ、真子の目線に合わすようにしゃがみ込む。

「あまり…無茶はしないでくださいね」

まさちんは、優しく微笑んだ。
真子は、その表情に、戸惑い、まさちんから目を反らす。

「…ごめん…」
「はい?」

真子の声は、まさちんには聞こえていなかった。
突然、真子は、まさちんを押す。

「って、組長ぉ〜〜!!!!」

まさちんは、後ろにひっくり返った。

「仕事はぁ?」
「今日は、キャンセルしましたよ。組長、起きなかったんですからぁ」

まさちんは、起き上がりながら言った。

「ったくぅ、今から行くよ」
「って、組長、午後2時ですよ。それに、仕事の方も…って!!!!」

まさちんは、慌てて目を反らす。
真子は、まさちんが、居るにも関わらず、着替えを始めた。

「…わかりました。直ぐに出掛ける用意を始めますから」

そう言いながら、まさちんは、伏し目がちに真子の部屋を出ていく。
真子は、鏡に映る自分の姿を見て、哀しみのあまり、目を瞑った。

「…あと…二日と半日…」

真子の体のあざと傷は、増えていた。



その日の午後3時半。
真子は、AYビル・真子の事務室のデスクで、大きく背伸びをした。

「お疲れさまです」
「終わったよぉ。てなことで、みんな、集まったかな?」
「キャンセルしたものを再び召集って大変なんですからぁぁぁぁあ」

まさちんは、本当に嘆いていた。

「御免って。でも、私の都合を聞かずにキャンセルするからや!」
「すみません…」

落ち込むまさちん。そんなまさちんの腕を引っ張って、会議室へと向かっていく真子だった。



夕方5時。
幹部会を終え、廊下に出た真子。

「組長、お話が…」

水木が、そっと真子に声を掛ける。真子は、そのまま、水木とエレベータに乗って地下駐車場へと向かっていった。水木は、真子の肩を抱きながら、自分の車に乗り込む。
そんな二人を柱の影から見つめる目があった。



「しゃぁないやろっ。燃えてる最中のことはっ」

真子を貫きながら、水木が応えた。

「でも…」

真子は、それ以上、言えなくなる。
水木の動きが激しくなっていた。
達したのか、水木は大人しくなり、真子の中から、出てきた。そして、真子を力強く抱きしめる。

「それより、これから、食事っつーのは、どうや?」
「むかいんとこ?」
「あほ言うな。俺んちに決まっとるやろ」
「…水木さん家…ね。まさちんも、一緒に…」
「…また、飲ますで。薬入りで」

真子の目つきが変わる。

「あの日もそうだったのか?」
「当たり前や。そうでもせんかったら、ゆっくり抱かれへんやろが。
 それでのうても、あいつは、深く眠らない奴やろが。…呼ぶか?」
「…いい。桜姐さんのことで、話し合うとでも、言っておくよ」

水木は、時計を見た。

「そろそろ戻らないと、やばいよな」

水木は、散らばっている真子の服を拾い上げ、真子に渡す。真子は、慣れたような感じで、水木から服を受け取り、身につけ始めた。

チュッ。

水木は、真子の胸元に軽くキスをする。

「ほな、俺は、ここで待ってるで」

真子が水木の車から降り、エレベータホールへと向かって歩いていった。
水木は、不適に笑いを浮かべながら、服を身につける。



エレベータが地下駐車場に到着した。真子が乗り込むと同時に誰かが、乗ってきた。

「西田…」

エレベータのドアが閉まり、上昇する。


エレベータの中では、真子と西田の二人っきりになっていた。何かを話すことなく、エレベータは、数字を増やしていく。
突然、真子が前のめりに倒れた。

「組長!」

西田は、上手い具合に真子を支えていた。

「…ご、ごめん…」
「兄貴の条件…守ることありませんよ」
「…に、西田…」
「長年、兄貴と共に生きてきているんです。組長との間に、何かが
 あることくらい、昨日のお姿を見たら、すぐに…」
「…桜姐さんには、悪いと思ってるよ。親密な仲になってね…」

真子は、体勢を整え、壁にもたれかかった。そして、一息つく。

「兄貴と共に行動している期間を考えると、約一週間ではありませんか?」
「…だから、何だよ…」
「…それ以上は、組長の体が、壊れて…!!!」

真子は、西田の胸ぐらを掴みあげた。

「…何も…言うな。その条件について、詳しいのなら…何も…言うなよ」

エレベータが到着した。真子は、西田の胸ぐらから、そっと手を離し、エレベータを下りるが、下りたところで、全身に痛みが走り、膝の力が抜けた。

「!!!」

西田が、真子に手を差し伸べ、再び、支えていた。その時、真子は、西田の右腕の傷に気が付く。

「…西田、…これは?」

真子の目線が、自分の腕の傷にあることに気が付いた西田は、笑顔で応える。

「事故…ですよ」
「…知らなかった…」

西田が…そうだったのか…。

真子は、言葉を飲み込んだ。

「常に隠してますから。知る奴は、少ないですよ」

西田の笑顔に、真子は戸惑い、その場に座り込んでしまった。

「まさちんさん、事務所ですか?」
「…いい。今夜も予定があるから。こんな姿、見られたら、どやされる」
「しかし、組長…」
「…ありがと。でも……内緒に、しててくれ」

真子の真剣な言葉に、西田は、心を打たれる。

「…わかりました…。…負けないで…ください…」
「あぁ。…悪い…体を支えてくれないか? 膝に力が入らない…」

西田は、真子に手を貸す。
真子は、壁にもたれながら、立ち上がり、息を整えた。

「ありがと」

真子は、呟くように言って、事務室へ向かって歩き出した。傍目にも、体力の限界が解る感じなのに、その後ろ姿は、それを隠すように、力強かった。
西田は、真子の後ろ姿を見つめながら、意を決して、何処かへ向かって行った。





西田が向かった先。そこは、橋総合病院・桜の病室だった。

「西田、なんや、慌てて」
「…姉貴…俺、俺…どうしたら、ええん?」
「何か遭ったんか、椿」
「…昔、兄貴がやってたあの恐ろしいゲーム…覚えてる?」
「あぁ。あれか。真北さんにきつぅ言われてやめたやろ」
「それを、今、再びやってると言ったら?」

桜の顔が曇る。

「相手、誰や?」
「……組長……五代目です」
「なん…やて? 椿、それ、ほんまか!!」

西田は、ゆっくりと頷いた。

「昨日、組事務所に来た時、兄貴、組長と寝てたんです…。その時に
 組長の体にあざが…。今日、組長にお聞きしました。…組長、もう、
 足がふらふらです…立つのもやっとのようです…」
「いつからや?」
「兄貴と行動を共にしてる日を考えると、一週間…」
「…椿…停めな…、五代目が壊れる…」
「でも、条件が…」
「…一体、どんな条件なんやろ。…椿、あん人の行動、監視してんか」
「はい」

西田は、急いで病室を出ていった。

「…何してんねや、あん人はぁ…。五代目に…親に…」

桜は、唇を噛みしめた。




水木邸。
水木は、もちろんの如く、真子を招いて、若い衆と盛り上がる。真子は、常に、笑顔で楽しむ。しかし、真子と水木のゲームを知った西田だけは、違っていた。

『あん人の行動、見張っておいてんか』

桜から指示を受け、さりげなく、二人を観察していた。

「組長、そろそろ…」

水木が、怪しげに微笑みながら、真子に言う。

「そうですね」

真子は立ち上がる。しかし、足下がふらついていた。

「あかん…飲み過ぎたかな…。水木さん、部屋…いいですか?」
「ん? あ、あぁ。ほな、お前らで、盛り上がっとけ」
「ありがとうございます。お休みなさいませ」
「お休み」

水木は、真子を支えながら、宴会している部屋を出ていった。西田もそっと、席を外す。
廊下で、二人っきりになった真子と水木。水木は、真子の肩を抱き、唇を寄せている。
ちらりと見せる真子の嫌悪な表情。しかし、それは、水木を見るときに笑顔に変わる。

水木は、真子の肩を抱いたまま、自分の部屋へと入っていった。
部屋に通じる廊下の先に立つ西田。


「泊まると言うてきたんか?」
「あぁ」
「ほな、朝までか…な!!」

言うと同時に、水木は、真子を抱きかかえ、ベッドに放り投げる。バウンドする真子の肩を押さえつけ、真子を見つめる。そして、真子の唇にしゃぶりつく。
真子の両手は、自然と水木の体に回された。水木は、真子の行為に喜んだように、微笑み、真子の服をはぎ取っていく…。

真子の肌に爪を立てる水木。
真子の体が、仰け反った。

「水木…」
「なんやぁ?」

吐息混じりに返事をする。

「昔の感情…納まったのか…?」
「…はぁ?」
「いいや…何も……うっ…んーーー!!!」

真子は、激しく貫かれる…。
水木は、終えても手を休めない。
真子を簡単に抱ける日も残りわずか。
そう考えただけで、水木の手は、勝手に動いていた。
水木の肌に爪を立てる真子。
水木は、真子の中へ入り始める。
部屋の内線が鳴った。
水木は、真子を激しく揺さぶりながら、受話器を取る。

「な…んや?」

水木の息は荒い。受話器の向こうの組員は、水木が何をしているかを把握する。

『すんません。まさちんさんから電話です』

水木は、嫌な名前を聞いて、不機嫌な表情をする。

「最中や、言うとけ」
『はい』

水木は、受話器を定位置に置かず、電話の横に置く。そして、真子を揺さぶる腰を激しくさせる。
真子を自分に跨らすように座らせ、突き上げる。
仰け反る真子。

「あっ…あぅ…あぅっ…!!!」

真子は、声を上げる。

「もっと……もっと声を上げろ…!」

水木の激しさが増していく。
真子の声も、大きくなっていく……。



電話を切った組員は、受話器を置きながら、首を傾げる。

「どうした?」
「…兄貴…誰と…寝てるんや?」
「寝てる?!」
「…まさか…な…」

組員は脳裏に過ぎった考えを否定した。



水木の部屋から、声が聞こえてくる。ベッドのきしむ音も聞こえてきた。西田は、拳を握りしめながら、その場に立ちつくしていた。

「…組長……」

西田の頬を涙が伝っていた…。



「…どうや?」

真子は、天井を見つめていた。
水木は、ベッドに腰を掛け、タバコに火を付け、銜えタバコで真子に話しかける。

「何…が?」
「そろそろ、身についてきたんちゃうか?」
「…身に付く?」
「女らしさや」
「…どう、思う?」
「そうやなぁ。初々しさが、無くなったかな。まぁ、毎日、男に
 抱かれてたらなぁ。コツも覚えるやろて。のぅ」

水木は、タバコを指に挟んでいる手で、真子の額を優しく撫でる。
額の傷に触れる。

「…これか。まさちんが、手を引く理由」

真子は、素早く水木の手を払う。

「頭に撃ち込まれて、生きてるんだよなぁ。橋先生の腕は、ほんまに
 死人も生き返らせそうやな」

水木は、タバコを一口吸い、ゆっくりと煙を吐いた。

「俺も、生き返らせてくれるかな」

水木は、タバコをもみ消した。
真子は、眠っていた。

「…ったく、就寝時間になったら、素直に寝るなよぉ。…起こしたる」

水木は、真子の横に寝転び、真子を上に乗せる。
力無く、水木にもたれかかる真子の寝息が、喉元にかかる。
水木の感情が高ぶり始めた。
水木の両手が、真子の背中を伝い、下半身へとゆっくりと動いていく。

「…ん…」

眠る真子が、小さく声を上げる。

「ふふふ…眠りながらでも、反応するようになったんか…」

水木の感情は、更に高ぶっていく。
水木の指が、中へ入る。
ゆっくりと動くことで、濡れ始めた。
水木は、真子の体を起こし、貫き始める。
上下に動く真子の体。
水木は、真子の胸を掴んだまま、真子を激しく揺さぶり始めた。
水木の指が、真子の肌に食い込んでいく…。


胸元に、新たなあざが付いた真子の体を、眺める水木。
初めて抱いた時よりも、ラインが美しく感じる。
体の所々に残る縫合の痕。
水木は、真子の腹部の傷に指をそっと当てた。

「…あの時の…」

ミナミでの事件が脳裏を過ぎる。
水木は、突然、起きあがり、ガウンを羽織って、部屋を出ていった。

廊下で様子を伺っていた西田は、水木の姿を観て、慌てて身を隠す。
水木が、キッチンへ向かった事に気が付いた西田は、そっと水木の部屋を覗き込んだ。
微かな明かりの下、部屋中に散らばる服。ベッドの上に横たわる裸体…。
それが、微かに動いた。

「組長」

西田は、小さな声で真子を呼んだ。

「…に…し…だ……か?」
「はい。今のうちに、部屋を出て下さい」
「無理や…」
「兄貴は、飲みに行きましたから。暫く戻りません。早く!」
「…できへん…」
「なぜですか?」
「…体が…動かない…。西田こそ…早くそこから、去った方がいい。
 水木さんに見つかったら、それこそ…」
「私のことより、組長の方が…」
「早く…行け!」

水木が、部屋へ戻ってくる足音が聞こえてきた。西田は、急いで、奥の部屋へ身を隠す。
水木は、アルコールのボトルとグラスを二つ手に持って、部屋へ入って行った。

「起きてるか?」
「…なんとか…でも、眠い…」
「今夜は、寝かさない言うたやろ。…飲み明かす」

水木は、グラスにアルコールを注ぐ。

「飲む気にならない…」
「ほな、俺が飲ましたる」

水木は、口に含み、真子に近づく。そして、口移しで、真子に飲ませた。

「げほっ…」

真子は、あまりの苦さに、せき込む。

「度数、高いやつや。…これを飲み干した後…俺のために、狂ってくれへんか?」
「…すでに…狂ってるよ…」

真子の言葉に触発される水木は、何度も何度も真子に口移しでアルコールを飲ませる。
ボトルが空になりかけた頃、真子が突然、体を起こし、水木に抱きついた。
そのまま、水木とベッドに倒れ込む。
真子は、水木の上に乗る。そして、水木の顔を両手で挟み、じっと見つめ、激しく口づけをした。
唇が離れた時、水木が、叫ぶ。

「酔うと性格変わるって、ほんまやったんやな。はっはっはっは!」

真子は、にやりと笑いながら、水木の肌に、唇を寄せ始める。胸元、腹部、そして、下半身へとゆっくりと移動する真子の唇。
水木の体が、軽く反応した。

「だから、俺は、責められるのは性に合わん言うたやろ!!!」

水木は、反応を誤魔化すかのように、真子の体を脚で挟み込み、起き上がる。

「…責められるのが、嫌なのかぁ〜?」

真子の声には、力が無かった。

「そうや。だから、俺から…や」

水木は、真子の脚を広げ、唇を寄せる。吸い付く音が、部屋に響いた途端、

「はぅ…うぅ…!!!!ん!!」

真子が声を挙げ、頭がベッドからはみ出、かくんと落ちた。
水木は、気にせずに、真子を責め立てていく。
真子の目から、一滴、涙が床に落ちた。

  こ・わ・れ・て・い・く…。



(2006.5.13 第四部 第三十三話 UP)



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※旧サイト連載期間:2005.6.15 〜 2006.8.30


※この物語は、どちゃん!オリジナルのものです。著作権はどちゃん!にあります。
※物語全てを著者に無断で、何かに掲載及び、使用することは、禁止しています。
※物語は、架空の物語です。物語内の登場人物名、場所、組織等は、実在のものとは全く関係ありません。
※物語内には、過激な表現や残酷な表現、大人の世界の表現があります。
 現実と架空の区別が付かない方、世間一般常識を間違って解釈している方、そして、
 人の痛みがわからない方は、申し訳御座いませんが、お引き取り下さいませ。
※尚、物語で主流となっているような組織団体を支持するものではありません。


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