任侠ファンタジー(?)小説「光と笑顔の新たな世界・復活編」

第一章 驚き
第十二話 珍道中

真子達が、天地山で目一杯くつろいでいる頃……。


三人の男が、とあるビルから出てきた。そして、近くに停めてある車まで歩いて行く。

「はぁ〜〜〜〜」

一人の男が、二人の男に、大きく、そして、長く、聞こえよがしな感じで溜息をついた。

「残りは、三件ですね。頑張ってくださいね」

赤いサテンのシャツを着た男が、ニッコリ微笑んで、溜息をついた男に言った。

「残りは、俺でやるから、もぉええって」

溜息をついた男が、呆れたように応える。

「一緒の方が、早いと思うねんけどなぁ。あかんのん?」

どこかへ連絡を入れていたのか、もう一人の男が話しに加わると、溜息ついた男は、運転席のドアを開けながら、二人の男に目をやって、

「栄三、健……お前らと一緒やと、後始末が大変やんけっ!
 今日までの二日間で、合計27件。どれもこれもが、穏便に…って、
 どこが穏便やねん。お前らの穏便って、相手全員、壁にめり込む程
 殴ったり蹴ったりすることなんか?」
「兄貴ぃ〜。水木親分、だだこねてるやん」
「しゃぁないやろ。自分がやりたかっただけやねんから」
「壁にめり込むだけで終わるのになぁ。相手、意識あるやんなぁ」
「水木親分がやったら、相手、意識無くなるもんなぁ」

健と栄三は、そう言いながら、後部座席に乗り込んだ。

「って、だから、なんで、運転、俺やねん」

運転席に座り、エンジンを掛けながら呟く水木に、栄三は運転席と助手席の間から助手席へと移動し、

「水木親分の新車やし、俺の運転やと、クセつくで?」
「何も仕掛けんなよ? これでも、真北さん仕様やねんから」

周りを注意しながら、水木はアクセルを踏んだ。

「はいはい。…で、健、なんて?」

栄三は、先程、健が連絡をしていた内容が気になったのか、後部座席に振り返りながら尋ねる。

「向こうは、手こずってるみたいやで」

健は小型のパソコンで何かを打ち込みながら、栄三と応対し始めた。

「須藤親分と、八っちゃんの二人やのに?」
「注文が多いらしいわ」
「身の補償は無理や。自業自得やん」
「あっ」
「どうした?」
「組長、動いた」
「……けぇ〜ん〜。…って、どこや? 天地山頂上ちゃうんか?」
「地山一家に向かうみたい」
「音声切れや。そして、組長戻るまで、アクセス禁止や」
「気になるやんかぁ」
「あのなぁ〜〜〜っ!!」

思わず怒りのオーラを発する栄三に、水木は思わず、

「暴力反対や! ここで暴れるなっ!!」
「暴れへんわっ」

そう言って、舌打ちをして、姿勢を崩した。

暫く、沈黙が続く車内。
栄三は、窓の外を流れる景色を何気なく眺め、健は、ポケットから取り出した小型のイヤフォンを耳に付ける。水木は、触らぬ何たらで、何も言わず、安全運転を心がけていたが、その沈黙を破るかのように、栄三に尋ねる。

「……地山一家って、真平ちゃんが継いだんやろ?」
「あれだけ跡目を嫌がって、一般市民として過ごしてたのに、
 突然やったから、俺は驚いた」
「今まで築いた地位を捨てて、戻るんやなぁ」

水木は、しみじみと語り、ウインカーを左に出した。

「まぁ、わしかて、同じようなもんやったし、解るで」
「水木親分は、生まれたときから極道やん」
「栄三は、極道ちゃうやん。小島さん、そうやろ?」
「そうやけど、親父、四代目に心底惚れとったもんなぁ」
「でも、杯…」
「交わしただけや。真北さんもやで」
「いや。真北さんは、元から、あっちの人間やん」
「まぁなぁ〜。慶造さんも恐れる程の暴れっぷりやったけどな」

笑いを堪えながら、栄三が言った。

「その真北さんが停められへんのが…」

水木は、後部座席に目をやった。

「俺も無理やで〜」

栄三も後部座席に目をやると、そこに座る健は、顔を上げ、

「アクセス切っとるって。疑わんといてや〜」

膨れっ面になった。

どうやら、真北でも停められない程、健の怒りは、凄いようで……。

「理子ちゃんも一緒なのか?」

ふと気が付いたように、水木が尋ねる。

「高校の時に行ったスキー旅行の時のクリスマスパーティーで
 ぺんこうと一緒に話し込んでたらしいわ。
 地山親分の話で、思い出したみたいや」
「組長の話やと、クリスマスパーティーの時は、
 変装して、紳士的な雰囲気で話しかけてた〜って。
 あの時も同じようにしてたんかな。あっ! そっか。
 ぺんこうの先生っぷりに驚いたんちゃうか?」
「その通りやで! 理子ちゃん言うてた〜!」
「………で、健」

少し低い声で、栄三が言う。

「電源切ってイヤフォン外せや」
「……………気になるねんけど…あかん?」

健は上目遣いで栄三を見る。

「…………あかん」

栄三は、健に手を差し出す。

「……ごめん……」

そう言って、健はイヤフォンを外し、イヤフォンにある小さなボタンを押し、それを栄三に手渡した。

「……そんな小型でも受信するんか?」
「まぁな。音声だけでも必要な時あるやろ」
「ったく、ほんま、最新鋭のもん、造りよるのぉ」
「小島家本来の姿ですから〜」

車は、とある事務所の前に停まった。ところが、そこには、すでに、別の車が一台停まっている。その車に見覚えがあるのか、栄三たちは、眉間にしわを寄せ、事務所から姿を現した男に気付き、項垂れてしまった。

「ったく、あのひとはぁ〜〜っ!!!」

栄三が、怒り任せに車から降り、ドアを閉めた。

「終わったぞぉ」

軽い口調で栄三に話しかけてきたのは、真北だった。

「水木の仕事ですよっ。何してんですかっ!!」

思わず怒鳴る栄三に、真北は笑顔を見せるだけ。それには、栄三も呆れてしまう。

「何も起こらんから、俺、暇やもん」
「組長命令なんですから、起こりませんよ」
「なんやねん、どいつもこいつも、俺に内緒でやりよって。
 どこもかしこも、穏便に終わらせやがって」
「あかんのですか?」
「暇になるやろ〜」
「だから、組長命令なんですから、暇になるの当たり前ですっ!」
「こっちに気を遣わんでもええのになぁ」
「あぁのぉぉおぉねぇ〜〜〜っ」

真北と栄三のやり取りを、水木と健は車の中から眺めていた。

「なぁ、健」
「ん?」
「今回、真北さんを外すんやったら、真北さん、天地山に一緒に
 行けば良かったんちゃうん」
「組長が、一緒に行くことを外しましたよ」
「真北さんこそ、休暇が必要やろ。あの日から、休み無しやで」
「そうですけどね。事態が事態だけに、組長が戦力を削ろうとは
 しなかったんですよ。本来なら、一緒に天地山でしたけど、
 新たな情報が入ったんで、兄貴と一緒に行動の予定でしたよ」
「それを、くまはちが…か…?」
「えぇ」
「ほな、あの件数、お前ら二人でやる予定やったんか?」
「そうですよ。なのに、キルがクールと一緒に全部請け負って、
 俺ら暇やねんもん」
「………だからって、俺の方に来んでもええやろ」
「ほな、真北さんと一緒に回りますか?」

健に言われ、水木は、真北に目をやった。

「………残り、終わらせてるっぽいねんけど」
「………ですね…」

健は小型のパソコンで、真北の行動をチェックしたらしい。

「須藤親分の方、手伝いますか? 水木親分」
「俺、休暇〜。栄三に伝えといてんか。ほれ、降りろ」
「兄貴に伝えておきまぁ〜す。この後の行動も」
「それは言わんでええ」

水木の言葉を聞いて、健はニッコリ微笑み、パソコンを懐に入れ、車から降りていった。
健が降りた途端、水木はアクセルを踏み込み、さっさと、その場を去って行った。

「すばや〜〜」
「健、足どうするねん」

真北の車を指さしながら、健は近づいていった。

「あほ。この後、あっちに戻る言うてるで」
「暇やのに? おっとっ!!!」

そう言った健の頭上を、真北の回し蹴りが素早く通り過ぎていった。

「で、真子ちゃんは?」

真子のことを尋ねながら、真北は二人を車に乗るように指で合図し、キーを栄三に放り投げ、自分は後部に乗り込んだ。健は助手席に座り、栄三は運転席に座った途端、直ぐにエンジンを掛け、アクセルを踏む。

「地山一家に行くそうですよ」

健は、再びパソコンを取り出し、画面を真北に見せた。
赤い点滅は、天地山ホテルを離れ、とある場所を目指して動いている。

「そういや、挨拶しに行きたいって、言ってたっけ」
「組長は、ご存じないですよね」
「あぁ。天地山ホテルで会った時は、真子ちゃんには
 見せられないっつーて、ちゃんとしてたもんなぁ〜。
 驚くやろな〜あの変わりっぷり」
「真北さんは、正月に挨拶行った時に、見たんですか?」
「正月やで。まさか、そんな格好やと思わんで。俺、
 笑い堪えるの、大変やったで。噂には聞いてたけど、
 あの格好は無いやろ〜。正月やで」

『正月やで』を二度も言うほど、真北は何かを思い出したのか、笑いを堪えるかのように、語っていた。

「真北さんが思い出し笑いするほどやで…健、負けたな」
「俺は芸、あっちは本来の姿やん。比べもんにならんって」
「ところで、真北さん」

栄三が突然、話を切り替える。

「あん?」
「どちらへ?」
「須藤の方、手こずってるんやろ? そっち回る」
「……どちらから入手ですか…?」
「まさ」
「…組長、一緒に見てたんですね…」
「ったく、それくらい気付けよ」
「優雅さんに関しては無理ですって。連絡先ですら、知らないんですから」
「桂守さんは、知ってるんやろ?」
「優雅さんが一方的に連絡してるらしいですよ」
「だからって、真子ちゃんに教えることないやろ〜」

何やら、真北からは、ちょっぴり悔しそうな雰囲気が漂う。

「真北さんは、連絡取らないんですか?」
「取らんな。向こうが言うてくる分は、知らんけど」

 このひと、連絡先を知ってるな…。

そう思いながら、栄三は、ルームミラーで真北の様子を伺っていた。

「それで、原田からもらった情報は、俺が、あずまからもらった
 情報と一緒ですか?」

栄三は、懐から出した書類を真北に手渡した。真北は、すぐに書類の内容を確かめ、

「一緒やな」

応えた。

「真子ちゃんは、結果だけを待ってるらしいが、そのつもりか?」
「経過を伝えたら、速攻で帰ってきそうですからね。
 それでなくても、怒ってましたからね〜、くまはちに」
「あれは、俺でも怒るで。ほんまに、益々厄介になりやがって。
 キルとクールが居るからって、動きすぎや」
「…………もしかして、真北さん……あっちの仕事……」
「………させるんじゃなかったなぁ〜」

呆れたように、真北が言って、項垂れたことで、くまはちの行動を把握した栄三と健。項垂れた真北の姿が、あまりにも滑稽だったのか、栄三と健は、大爆笑してしまう。



阿山組が関西で名を馳せる組を傘下に置き、関西での仕事も始めた頃、真北は本来の仕事に繋がるものを大阪で行っていたことがある。時々だったが、真北は、なぜか、くまはちを本来の仕事に同席させていたことがある。その時の くまはちの仕事っぷりに惚れた、真北の本来の仕事仲間が時々、くまはちに連絡を取り、手伝ってもらっているらしい。

今回も、その状態だったらしく、真北は、『真北の方』の仕事=本来の立場である特殊任務関連・警察関連の仕事が、全くなく、真北個人で動いていた。

真子たちが無事に天地山へ到着した日、真子の様子を伺うために、まさに連絡を入れた時に、まさが、それとなく、真子が仕入れた情報を真北に伝えていた。あまりにも暇な為、真北は、その情報から、栄三たちの行動と、この日の水木との行動まで予測し、先回りをして、一応、『穏便』に、話を付けていた。

「そりゃ、厄介やわ。くまはちやし、無理でしょう?」
「どうにか…できたら、しとるわなぁ、栄三」
「くまはちは、昔っから、俺を見下してますので、
 何言っても無理です」
「栄三の言葉に従うのん、誰も居らんなぁ」
「ほっといてくださいっ!!」
「あぁ、ほっとく。…到着したぞぉ」

真北は、健から小型パソコンをいつの間にか取り上げて、赤い点滅の動きを見つめていた。
赤い点滅は、とある場所に留まっていた。
そこに書かれている建物の名前こそ………。




所は変わり、天地山。

「はい、到着ぅ〜」

まさが運転する車が、地山一家の駐車場に停まった。

「光一くん、美玖ちゃん。もう一度、確認しますよ。
 ここでは、どうしますか?」
「ちゃんとすわって、しずかにする!」

光一と美玖は声を揃えて、まさに応えた。

「はい、よろしい! では、行きますよぉ」
「はい! ごあいさつも、する!!」
「理子、ほんまに、良かったん?」

真子が、地山一家の玄関から出てきた、組員を見つめながら、理子に尋ねた。

「おっちゃんとは、少ししか話してへんけど、なんやろ…。
 真子と一緒に挨拶しとかな、あかん気がしてんもん」
「あのパーティーの時、芯と一緒に話し込んでたとは…」
「おっちゃん、真子のこと、誉めまくっとったから、高校での話、
 めっさしたったんやで、先生が停めたくなるほど」
「そりゃ、芯とのやり取りも話してたら、停めたくなるわ…」

そんな話をしながら、真子と美玖、理子と光一は、車から降り、それぞれ手を繋いで、迎えに出てきた組員に、一礼した。

「原田支配人、どうされました?」
「すまん。連絡もなしに、突然来てしまったけど…」
「親分なら、居りますが、その、こちらのお二組は…もしかして…」

一礼した真子達に気付き、組員は、

「直ぐにお伝えしますので、こちらへ」

まさたちを組事務所へ招き入れ、応接室へと通し、組長室へと入っていった。

「おぉぉお……」

理子は応接室を見渡し、思わず声を出してしまう。

「なんか、思ってたんとちゃうやん」
「理子さん、凄いのを予想してましたか?」
「うん。いかにも!って感じかと…」
「地山さんも一般市民との接触が多いですから、
 それなりに変わりましたよ。昔は、いかにも!という
 雰囲気でしたからね…」

まさは、昔の雰囲気を思い出したのか、しみじみと語っていた。

「真子の影響なん?」
「えぇ」

と、まさと理子が話している時だった。
ドアの向こうから、ちょっぴり怒った感じの声が聞こえてくる。

『ったく。まさ兄貴はぁ〜〜。客人連れてくるなら、
 連絡くらいぃ〜いっつもいつもぉ〜〜』

「……まささん」

真子が、そっと呼ぶ。

「はい」
「いつも…とは…?」
「あっ、いや、その……」

言葉を濁す感じで応えた時だった。応接室のドアが勢いよく開き、

「原田支配人っ! ほんまに、ええ加減にしてください!!
 母と子の二組連れてくるんわええけど、働き先については、
 うちはもう、あらへんって言うたやないですかぁ〜〜!
 それこそ、天地山ホテルの方で………って……!!!!!」

何やら関西弁が混じり、口調も関西そのもので、虎柄でキンキラキンに輝く服をまとった男が、入ってきた。まさの姿を観た途端、突然何やら言い始め、そして、母と子の二組を指さし、まさに向かって言い切った後、母親二人に目をやって、そのうちの一人の姿に気が付いた途端、勢いが殺げ……。

「あ……ご、……ご……ま…真子さんっ!!!」
「お久しぶりです。その……冬にお話していたので、
 突然とは思いましたが、ご挨拶に………」
「!!!!! ちょ、ちょ、ちょぉ待てっててって、
 お待ちくださぁい!!」

慌てたように、真子に言い、応接室を出て行った。

『あほんだらっ!! ちゃんと名前聞いとかんかいっ!!』
『だから、原田支配人…』
『まさ兄貴ちゃうわっ! 二組の方や!! って、お前、
 真子さんの顔ぐらい、知っとるやろがっ!!』
『真子さんって、えっ!!?!?!!』

ドアの向こうの会話は、応接室まで筒抜けになっていた。

『服あらへぇ〜〜ん!!!』

真子と理子、そして、美玖と光一は、呆気にとられたのか、キョトンとしていた。

「あの…まさ…さん」
「……伝えてきます」

そう言って、まさは、応接室を出て行った。



応接室から、まさが出てきた事に気付き、キンキラキンの服を着ていた男が振り返る。

「……真平…全部、聞こえてるよ…」

まさの言葉に、真平が慌てたように、小声になる。

「まさ兄貴ぃ、やっぱり、連絡しといてくださいよ。
 俺、このままお逢いしてもうたがな……」
「お嬢様は気にしてないよ。以前、少しだけ伝えておいた。
 普段は、もっと派手だと…」
「真子さんが思う派手と、これは、ちゃいますって」
「お嬢様は大阪に暮らして長いから、大丈夫だと思うが…」
「動物柄はええとして、キンキラキンは見慣れてないかと…」
「実家の方にも、派手なの居ったけどなぁ」
「それは、兄貴が現役の頃ちゃいますん?」
「気にしないと思うよ」
「俺が気にするやんか!!!」
「……真平〜、そうやって、お嬢様には、ずっと誤魔化すんか?」

まさの雰囲気が、ちょっぴり変わる。

「親父だって、変装して楽しんでたんやろぉ…俺も…」
「…今日は、用意してないんだろう?」

まさの言葉で、真平と呼ばれたキンキラキンの男は、何かに気付く。

「もしかして、俺を……からかってませんか?」
「その通りや」
「うぐぅぅぅぅっ!!! まさ兄貴ぃ〜〜っ!! 俺、怒りますよっ!」
「俺は、本来の真平の姿をお嬢様に知ってもらいたいんだよ。
 偽りは、もう嫌だからな」
「兄貴……」
「……ん? 兄貴??」
「原田支配人……」
「ということで、行くぞ」
「はぁ〜い……」

まさと真平のやり取りを見ていた組員は、

「お茶、用意します」

直ぐに対応する。

「お嬢様と子供達には、オレンジジュース、よろしく」

優しく組員に伝えた まさは、覚悟を決めたかのように拳を握りしめ、気合いを入れる真平を見て、微笑んでいた。

「…し、失礼します」

そう言って、真平は、応接室へ入っていった。
キンキラキンが眩しい服のままで……。

「ようこそお越しくださいました」

真平は深々と頭を下げ、真子達に丁寧に挨拶をした。

「私の方こそ、突然で申し訳御座いませんでした。
 それにしても………眩しいですね…」
「あっ…その……」
「確かに、派手ですね、まささん。キンキラより更に上を行く
 キンキラキン………想像以上に派手ですね…」

真子の言葉に、ニッコリ微笑む まさとは反対に、真平の表情は引きつっていた。

「お飲み物、お持ちしました〜」




「いただきます」

光一と美玖は、きちんと挨拶をして、オレンジジュースを一口飲む。そして、真平と笑顔で話している真子と理子に目をやり、話を聞いていた。

「光一君、美玖ちゃん、こっちで遊ぼうか?」

飲み物を持ってきた組員が、たいくつそうに見えた二人に声を掛ける。

「なにがあるの?」
「たっくさんあるから、選んでいいよ」
「ほんと? ねぇ、ママ。いい?」

光一が理子に尋ねる。

「みくも、いい?」

美玖は、真子に尋ねる。

「それなら、先に、ご挨拶しよか」
「うん」
「真平さん、よろしいですか?」
「ご案内します」

事務所の廊下を通り、更に奥にあるドアから、別宅へと向かう真子達。そこは、地山の自宅だった。古い日本家屋だが、調度品から床、扉、天井まで艶があり、とても綺麗で穏やかな雰囲気が漂っていた。

「お邪魔します」

一歩踏み入れただけで、心が和む。

「素敵なところですね」
「ありがとうございます」
「真子さんの実家も相当古いですよね」

まさが真子に言った。

「あれ? まささん。来たことあったっけ?」
「えぇ、何度か」
「こちらです」

そう言って、真平は、仏間に真子達を案内した。

「失礼します」

礼儀作法は忘れない真子と理子。その二人の仕草を真似て、光一と美玖も入っていった。まさも続いて入っていく。

「親父。真子さんと理子さん。そして、真子さんの娘さんの
 美玖ちゃんと、理子さんの息子さんの光一君が来てくれたよ」


真子達は、仏壇を見つめ、そして、挨拶を済ませた。




光一と美玖は、別室で組員達と遊んでいる頃、真子と理子、そして まさは、真平と地山親分の話で盛り上がっていた。

「ほんまに、親父は真子さんと逢うこと楽しみに
 しとったんや。よぉ話に出てたで」

話し込むうちに、いつの間にやら真平は関西弁へと戻っている。

「私も、おじさんと逢うの楽しみだったんですよ。
 だけど、毎年お逢いしてた紳士的なおじさんが、
 同じ人で、地山さんだとは思わなかったんですよ」
「その話、先生と一緒に話してた時に聞いてた」
「理子さんの事も聞いてますよ。お友達だと。そのお友達と
 真子さんが一緒に暮らしてるとお聞きして喜んでましたよ。
 まるで我が子の成長を見守るかのように」
「年に一度しかお逢いしてなかったけど、地山さんだと
 判ったときからは、毎年楽しみにしてたんですよ」

真子たちが昔話で盛り上がっているのを、まさは、優しく見守っていた。

「跡目を継いだと耳にしたときは驚きましたけど、それ以上に
 大阪に居たということに、驚きました……私、知らなかった」
「そりゃ〜、真子さんだけでなく、水木や谷川に迷惑かけないよう
 全く接点の無い世界で過ごしてましたから。時々、ビルにある
 向井さんのお店にもお邪魔しておりましたし…あぁ、もちろん、
 こんな格好してへんかったけど、美味しかったで〜」
「……もしかして、地山さんは、時々、大阪に???」
「俺が心配や〜言うて、夏には毎年来てた」
「街の事なら、色々と報告受けてたんだけどなぁ……水木さん
 何も言わなかったなぁ……やっぱし、さぼってる……」

真子は膨れっ面になる。

「水木は私のこと、知ってますよ。だけど、一般市民ですから、
 そういう扱いでしたね。だから、跡目を継ぐこと伝えたら
 めっさ驚いてましたわ」
「ところで、大阪の方は、もう良いんですか?」
「あっちも、ちゃぁんと二代目居りますんで、心配いりまへん」
「帰ったら、挨拶しに行こうかなぁ」
「お嬢様、今は…」
「落ち着いたらです」

真子は、まだ、怒っている。その口調に、真子の怒りが含まれていた。そんな二人の雰囲気を楽しんでいる理子は、笑いを必死で堪えていた。

「その仕草、虎雅(たいが)さんに似てますね」
「真平っ」
「あっ……」

発した言葉を打ち消すかのように、まさに名前を言われ、慌てて口を噤む真平だったが、

「あれ? もしかして、うちのお父さんと会ったことあるんですか?」

理子は、何かを知っているかのように、真平に語りかけた。

「えっと……」

躊躇うかのように、真平は まさを見る。

「父…野崎虎雅(のざきたいが)の事は、母と桜さんから
 しぃっかりと教えてもらいました。うちが生まれる前のことやし、
 うち、お父さんの顔は、写真でしか見たこと無かったんやけど、
 お兄ちゃんがグレたんも、母が、同じ道という言葉を発した事も
 ぜぇんぶ、詳しく教えてもらったんや。…まぁ、涼と付き合って、
 結婚を決めた時にね…って、真子は知らんことやけど」
「ほんま驚いたもんなぁ〜あの時」

真子が、しみじみと口にした。

「ところで、うちって、そんなに、父に似てるんですか??」
「人情が厚く、周りに常に気を遣い、更には、何かと、
 その場を笑いに包み込む人でした。誰もが憧れる人。
 私も、その一人ですよ。だからこそ、理子さんの
 笑いを堪えるその雰囲気に、虎雅さんを感じました」
「ほんま、不思議な縁やわ。ここにも繋がっとったとは…。
 …あれ? もしかして、母のことも??」
「お二人のなり初めも知ってますよ」

ニッコリ微笑む真平に、理子の目が輝いたのは言うまでもない。

「教えて!!」
「それは、また今度の機会に。…というか、すみれさんに許可要ります!」
「……母って……もしかして……」
「至って、普通の方ですよ。こちらの世界とは、本当に無縁の方です。
 だからこそ、すごぉく怖かったかなぁ……」
「家に帰ったら、母に聞いてみようっと。真平さんの大阪での生活を〜」
「……勘弁してくださいぃ〜〜! 支配人〜〜助けてくださいよぉ」
「……関西弁が消えるほど、うろたえるなって…ったく」

呆れたように、まさが呟いた。

「光一君と美玖ちゃん、楽しんでるとええねんけど…。
 あいつら、結構、人相悪いし……」

真平が上手い具合に話を切り替えた。

「須藤さんとこの人達と遊んでるし、大丈夫ですよ」
「須藤さんとこは、ええ顔の人らやし、あいつらと、えらいちゃうやん。
 水木っとこも、そうやし……って、なんで、ここ人相悪いの多いねん」
「…そう思わへんけどなぁ。真子、様子、見に行けへん?」
「あっ、いや……私が行くと……」
「そっか。五代目って意識してまうか…ほな、ちょっと行ってくる」
「よろしく〜」
「仲良くやで〜」
「はぁい」

『まささんに対して、もう怒るな』という意味を含めた言い方をして、理子は、応接室の隣にある部屋へと向かっていった。理子の姿がドアの向こうに消え、子供達と組員達に話しかける声を聞いてから、真平は、そっと真子に伝えた。

「真子さん、まさ兄貴のこと、もう許してやってください」
「………真平さんも、協力してましたね…」
「すんまへん。うちの情報網も絡んでます。…それほど、
 心配なんです。わしもそうですから」
「あの世界から離れて、長年過ごしてるというのに、
 やっぱり、どうしても戻ってしまうんですね…。
 解ってる。解ってるんだけど……どうしても
 ……怒りたくなるんですよね〜」

離れたはずのやくざの世界。しかし、いざとなったら、その世界へ戻って行く。
その思いは、真子自身、理解している。しかし、真子は、命のやり取りをしないように、その世界から離れてもらおうと周りに伝えているのだが、その世界で育った者達の身についたものは、中々抜けない。それに対して、真子は怒りが募るばかりで……。

「どちらも、頑固……うぐっ……兄貴……」
「兄貴、言うなっ」
「ここにも、まささんを兄貴という人が居たんだ……。もしかして、
 理子の父のこと…。凄く言いにくそうだったけど、…どうなの?
 私が生まれる前の話は知らないことが多いし、小さな頃の事は、
 本当に誰も話してもくれない。話したくないんだろうな…というのは、
 肌で感じることだけど…」
「理子ちゃんの父は、任侠の世界では、有名だったんです。
 組を持たず、たった一人で、生きていた男でした。その男が
 一般の女性を愛し、そして、足を洗い、普通に暮らしてたんですが、
 あの日…………」

どうやら、まさは、現役の頃、理子の父・虎雅のことを知っていたらしい。


その世界から抜け、普通の暮らしをしていた虎雅だったが、知り合いのピンチを聞きつけ、助太刀に向かい、その時に、命を落としてしまったということ。それは、丁度、すみれが、理子を身籠もった時期であり、生まれるのを楽しみにしていたということも耳にしていた。


「理子ちゃんが、全てをご存じかはわかりませんが、
 まさか、虎雅さんの過去のことを聞いていたとは…」

複雑な表情になる まさだった。その時、隣の部屋から、何かが聞こえてきた。

「……呼ばれたような…。…ちょっと、見てきますね……」

複雑な表情が、突然、鋭い眼差しに変わり、一言言ってから、隣の部屋へと向かっていく まさ。

「手加減したってくださいよ、支配人っ!」

真平の声は、届かなかったようで……。

『…私の話は、しないでくださいっ!!!』

ドアの向こうから、まさが、組員達に静かに怒鳴る声が聞こえてくる。

「ほんと、あいつらは……すんません…」
「………支配人として怒ってるね……」
「そういや、そうですね…子供達の為ですか?」
「それもあるけど、戻ったかなぁ…」

真子は、安心したのか、フゥッと息を吐いた。

「真平さん。本当に、これ以上、手を出さないでください。
 私たちでやりますので」
「阿山五代目…。重々承知の上での行動です。なので、
 どうしても、無理なときは、私を頼ってください。
 もう、兄貴は巻き込みませんから」

普通の女性から、五代目の雰囲気に変わったことにいち早く気付き、すぐに切り替える真平。
その鋭さは、長年、離れていたにも関わらず、元々備わっていたこともあるのか、健在である。

「真平さんもです。跡目を継いだとはいえ、長年、過ごしてきた世界は
 捨てないでください」
「ありがたい言葉です。……親父の気持ちが、凄く解りますよ。
 慶造さんの言葉に感銘を受け、まさ兄貴のことを天地親分から
 任されていたからと、ずっと、気に掛けてたし、そして、今は、
 真子さんが居られるから、こうして、何事も無く過ごせてるんですから。
 そんな真子さんから、その言葉を頂くと……」

真平の目が潤み始める。

「私は、何もしてませんよ。……父が守ってきた者達を大切にしたい。
 そんな思いで、生きてるだけです」

真子の笑顔が、真平の心を和ませていた。

「…真平さんは、ご存じなんですね。理子の父の最期を…」
「まさか、こうして繋がっていたとは。手を合わせてた時の
 理子さんの横顔が、すみれさんに似てたので、それとなく、
 支配人に聞いたんですよ。理子さんの旧姓を。野崎だと。
 まさ兄貴は、恐らく、最初の時に、気付いたと思います」
「そういや、理子と逢ったのは、高校生の時だ…。その時から、
 ずっと、そして、今も、何も言わずに居てくれるんだ…。
 ……まささんが、解き放たれる時って、いつなんだろう…。
 やっぱり、難しいのかなぁ」
「真子さんと居るだけで、大丈夫ですよ。だから、目一杯、
 甘えてあげてください。まさ兄貴、それだけで、嬉しいんですから」
「真平さん、もしかして…」
「内緒ですが、親父に頼まれてます」
「もぉ〜っ。まささんは、もう一人で生きていける大人やで〜」
「親父にとっては、いつまでも、子供なんですよ」
「なんだか、複雑やわ〜。私の父も絡んでるんやろなぁ」
「お察しの通り……。もちろん、真北さんもです」
「心強いや…」

そう呟いて、真子は、隣の部屋の方に目をやった。

「……まささんまで、楽しんでそうやね…」
「そうですね…」
「急に押しかけてしまったけど、お時間、よろしいんですか?」
「特に急いていることは無いですし、大丈夫ですよ。
 ところで、夜ご飯はどうされますか? よろしければ、
 近くのレストランに予約いれときますよ。
 …まぁ、レストランの料理長は、
 向井さんのお弟子さんですけどね」
「………もしかして……」
「跡目を継ぐ時に、一緒に、こっちに帰ってきました」
「帰ってきた??」
「私が、ここを出て行く時に、親父が付けた世話係の
 一人なんですよ。料理の腕が良かったのと、
 向井さんの腕に惚れたのと、…色々とあって……」

真平の話を聞いているうちに、真子は、思い当たることがあるのか、

「………私……ものすごぉ〜く知ってる方かもしれない…」

真平が跡目を継いだ時期に、むかいんの店に長年勤めていた弟子の一人が、故郷に帰ったと、書類に書いてあった。確かに、その後、店の厨房には、その弟子の姿は無く、むかいんから聞いた話では、故郷でレストランの料理長を務めているとの内容だった。

理子が、応接室へと戻ってきた。

「真子、夕飯は、近くのレストランな」
「えっ?!」
「涼が、すんごい気にしとってな……」
「……理子……知ってたん?」
「うちが天地山に行くって話した時に、涼がそれとなぁく
 教えてくれてん。でも、まさか、真平さんのお世話係だった
 人やと思わんかった。どぉ見ても、思い返しても、
 普通の人やん」
「確かに。そんな雰囲気、全く感じなかったんやけど……」

真子は、ちらりと真平を見る。真平は、ニッコリ微笑んでいるだけだった。

「……開店当初から、居ったんやけどなぁ………」

むかいんの店で働きたいと立候補してきたコック達の事は、どうやら、真平が、一枚噛んでいたらしい。

「真平さんの大阪での仕事……なんとなく、想像できるで…」

そう呟いた真子だった。




時刻は、午後六時半。
とあるレストランの料理長が、特別室へと料理を運び込んでいた。
客の一人が、料理長に向かって、小型のパソコン画面を見せた。

「やっぱし、行ったで、むかいん」

ここは、大阪のAYビルにある、むかいんの店。特別室には、真北と栄三、そして、健が夕飯を食べにやって来ていた。

「…地山一家に長居してたな」

真北が、ぶっきらぼうに話す。

「まぁ、心配してへんけど、長年一緒やったし、その後が
 気になるやん」
「まさは、知ってたやろな」
「こちらには来たことあっても、コック達のことは知らなかったかと
 思いますよ。それに、大阪に来て、長かったはずですし」
「真子ちゃんが生まれる前やもんなぁ。俺が現役バリバリの頃や」
「今でもバリバリでしょうが。ったく、いつになったら引退するんですか?」

栄三が、ちょっぴり怒り口調で尋ねる。

「お前らの世界が無くなったら考える」
「それなら、少し延びましたね〜」
「そうやなぁ〜。ほんま、困ったもんやで」
「すんまへんな〜」

真北と栄三のやり取りが、何となく怖い、むかいんと健は、言い合う二人を視界に入れないようにと、画面に見入っていた。

「大人しく食べてくださいね〜」

むかいんが、そっと呟く。

「はぁ〜い」

そう言って、真北と栄三は、静かに食べ始めた。

「ここ辞めて、一緒に戻ると言った時、めっさもめたんちゃうん?」

健が、画面を操作しながら、むかいんの料理に手を伸ばし、むかいんに尋ねる。

「俺が間に入ったけど、二人とも我が強くて、難儀したで。
 真平さんは、折角、手に職を付けたのに、自分と一緒やと、
 向こうの世界には戻ることになるから、一緒に来るなぁ言ってたし、
 天野さんは、本来の仕事だと、頑として譲らなかったからなぁ」

むかいんの店の開業当初から働いていた、コックの一人であり、本来は真平の世話係として、真子が生まれる前に、真平と一緒に大阪に来ていた天野涼真(あまのりょうま)。
真平が始めた事業の邪魔にならないように職を探し、得意の料理の腕を活かしたい、更には、真平の為に、美味しい料理を作りたいと、とあるホテルのレストランで働いていた。そのホテルこそ、真子達が大阪に来た頃に、むかいんが少しばかり働いていた宿泊先のホテルだった。

その時、笑顔の料理人として、食べる者達の心を和ませる、むかいんの味と腕に惚れ、職場の料理長と他の料理人から、むかいんの料理に対する心得と思いを聞いた途端、尊敬の眼差しを向けるようになる。そして、むかいんが店を開業する事を耳にして、弟子にして欲しいと懇願し、長年、共に働いていたのだった。

「ほな、故郷でレストラン開業は、むかいんの意見なん?」
「側で守りながら、仕事を続ければ良いのでは?って言ったら
 真平さんが、『レストラン開業したる!!』って」
「流石、そういうとこは、真平ちゃんの得意とするとこやわ。
 それに、地山一家は、あの辺りの土地、縄張りやん。
 見たところ、めっさええ場所に店を出してるやん」
「天地山名物の一つらしいよ」

嬉しそうに言って、むかいんは、テーブルの上の空いた皿を重ね、

「おかわりしますか?」

優しく尋ねると、真北と栄三は、同時に頷いた。

「…どれだけ、暴れてきたんですか……」
「お昼抜き」
「きちんと三食、摂ってくださいね」

むかいんは、ちょっぴり厳しい口調で言って、特別室を出て行った。

「真北さんは、冬、行かなかったんですか?」

健に言われて、真北は思い出す。

「あの日はドカ雪やったし、正月休みやった」
「ほな、休業中は…」
「真平ちゃん専属料理人」
「むかいんに憧れてたもんなぁ〜」

むかいんが、真子専属料理人のように、天野は、いつか、真平専属料理人として生きていきたいと思っていたらしく、故郷に戻ってからは、真平の自宅で、念願だった『真平専属料理人』として過ごしているらしい。

「お待たせいたしました〜」

むかいんが新たな料理を持ってくる。
先程の話が聞こえていたのか、料理を並べながら、むかいんが語り出す。

「今思うと、俺の姿に感化されたんちゃうかなぁって。
 天ちゃんが組長と仲良く話してたのは、組長を通して、
 真平さんの事、考えてたかもしれへん」
「今、その話してたとこや」

栄三は、新たな料理に手を伸ばしながら言った。

「ふふふ…その通りみたいや。天野ん(あまのん)、
 組長に、嬉々として話してて、真平ちゃんに
 停められとる〜〜」

健の突然の言葉に、真北、栄三、そして、むかいんの眼差しが鋭くなる。

「こぉるるるらぁ、健っ」

真北が怒りを露わに健を呼ぶ。

「けぇ〜〜〜ん〜〜〜!」

自分の店では暴れたくは無い為、怒りを抑えるかのように、こめかみをピクピクさせながら、むかいんが健を呼ぶ。

「…健、ここでは、やりたないで。
 それに、お目付役、一人増えとるけど…?」

栄三が、健に手を差し出す。

「だって、気になるやん。あかんの?」
「あかんっ!!」

三人の声が、重なった。
健は、耳に装着していた小型イヤフォンを外し、それを、しぶしぶ、栄三に手渡した。
栄三は、健の膨れっ面を見つめながら、小型イヤフォンの電源を切った。



(2020.8.10 第一章 驚き 第十二話 UP)



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