任侠ファンタジー(?)小説「光と笑顔の新たな世界・復活編」

第一章 驚き
第二十二話 開きかけの扉

夕方。
真子と美玖、そして、ぺんこうは、沢森邸で夕食を囲んでいた。
笑顔が輝く食卓とは打って変わって、険悪な雰囲気の中、鋭い眼差しで二人の男を睨み付けている、真北の姿が、栄三の部屋にあった。

「忘れてました…」

くまはちが、呟く。

「…俺もや……」

栄三は項垂れる。

「……こればかりは、俺も強く言えん…」

真北の鋭い眼差しが、一気に緩んだ瞬間だった。

「…で、どうや?」

真北、くまはち、そして、栄三の三人が同時に言って、健に振り返った。

「強力な麻酔ですね…」

都村から手渡された針に何かが付着している事に気付いた真北は、それを健に分析してもらっていた。

「…クマが一瞬で眠ってしまうほどのものですよ」
「真子ちゃんが一瞬で気を失ったらしいからな」

真北が言うと同時に、

「組長は、クマちゃいますっ!」

くまはちと栄三は、そう言って、真北を睨み付けた。

「そう睨むな…反省しとんねんから…」

真北は膨れっ面になる。

「で、今は?」

分析器具を片付けている健に、真北は尋ねる。
健は何も言わずに、小型イヤフォンを真北に手渡した。
それこそ、真子の様子を覗える代物。真北は直ぐに、耳にはめた。

「……むかいんと理子ちゃん、光一君まで参加しとる…」

真北の言葉を聞いた途端、栄三がアクセス画面に切り替えた。

「まだ、沢森邸ですね…」

一緒に画面を観ている くまはちが言った。

「賑やかすぎて、かえって迷惑になってへんかなぁ」

頭をポリポリしながら、真北が嘆く。

「…真北さん。都村の情報だけが出ませんね…」

栄三は、沢森と都村の情報を探っていた。

「沢森の方は、息子さんが殉職してますよ」
「見掛けたこと無いなぁ」

沢森の息子の写真付きで、画面に表示された情報を見て、真北は記憶にある警察関連の情報と比べていた。

「あっ、ありましたね。都村は、介護職で沢森へ
 紹介されてます。沢森の息子が殉職してから
 半年後ですね。それ以前の情報は無理…です」
「あの行動力は、尋常ではないな。…時々感じてる
 目線も、もしかしたら、都村だったのかもしれんな」
「そうですね…」

どうやら、真北と くまはちは、自宅で過ごしている間、時々、誰かに観察されているような何かを感じていたらしい。それが、どこから感じるのかまでは確認できずに居たが、真北が語った都村という人物の雰囲気から、悟っていた。

「どうしますか? そんな怪しげな人物との接触は、
 避けるべきだと思うのですが…」

いつになく、真剣な口調で、栄三が言うものだから、真北と くまはちは、返す言葉が出てこない。
いつもなら打てば響く感じで、言葉が返ってくる二人から、何も発せられないことに気付いたのか、栄三は、パソコン画面から、背後に居る二人に目線を移した。

「…いや、その……あのね……」

驚いたような表情をしている二人を見て、項垂れる栄三だった。

「こちらで、しときます」

そう言って、栄三は、再びパソコン画面に目線を戻し、何かを調べ始めた。

 ……おや?

栄三は、何かに気が付いたのか、眉間にしわを寄せる。

「真北さぁん」
「なんや?」

栄三に呼ばれ、真北は思わず冷たい返事をした。

「クラッシュしてもた〜」
「…はぁあああ?????」

栄三が都村を調べようと試みた途端、栄三のパソコンが突然動かなくなり、画面が消えた。

「まぁ、これで、はっきりしましたけどね〜」

いつものようないい加減な口調になる栄三は、ニヤリと口元を釣り上げて、目にも留まらぬ速さで文字を打ち込み始めた。

「…そうやな。…新たな敵…ってとこやなぁ」

真北も口元を釣り上げ、何やら企む表情になった。
そんな二人とは正反対に、くまはちだけは、鋭い眼差しになり、一点を見つめ、何やら真剣に考え始めた。

「よっしゃ、戻った。伊達に長年やってへんで、こっちは。
 それくらい想定内やし〜」

パソコンの状態は、元に戻っていた。

「仕掛けるほどやで。気を引き締めんとあかんで、栄三」

真北が忠告する。

「せやなぁ」

改めて言わんでも解ってるのか、栄三は、軽い口調で返事をした。

「八っちゃん、どうする?」
「今の所、危害を加える雰囲気は見当たらないから、
 いつもの通り接することにするが、今回の針…、
 都村の可能性も視野に入れておく。…それにしても、
 なぜ、近所に越してきたんだ…?」
「組長を狙ってるか、真北さんを狙ってるか…だな」
「新たな案件が増えてもたなぁ。暫く、忙しいやんけ」
「そんなに仕事が嫌なら、辞めればええのに…いてっ」

真北の言葉に返した言葉がいけなかったのか、栄三は、真北から拳を一つ、頭に頂いていた。

「……いつもなら、蹴りやねんけどなぁ」

苦虫を潰したかのように、真北が言ったが、

「怪我しててよかったで〜ほんまに」

殴られた後頭部を撫でながら、栄三が嘆く。

「…兄貴、怪我人やで。手加減してや、真北さん」

健が慌てて助言するが、

「手加減しとるやろが。心配すんな」

真北が慌てて健に言った。

「その二人のこと、詳しく調べるんやったら、
 俺がしとくけど…」

何やらやる気を出した健が言い終える前に、

「俺がやるから、ええで、健。完治まで動けんし」

栄三が健の言葉を遮ってまで、買って出た。

「兄貴ぃ〜、俺の仕事ぉ〜」
「喫茶店や。…なんや、飽きたんか?」
「ええねんけど、兄貴の顔を見たい客も居るし、
 兄貴と語り合いたい客も居るんやで。店に出てや〜」
「ったく、コーヒー煎れるんが無理やから、任せてるんやろが」
「立つのんも、やっとやもんな〜」

兄弟の会話に、真北が加わるが、なぜか、その表情は、とろけていた。真北の耳には、まだ、イヤフォンがささっていることに気付いた栄三は、パソコンの音声を入れた。

『真北さんに任せて安心なんですよ』
『大丈夫です。…そうですね…また、一緒に……』
『あっ…そうでした。暫くは、二人っきりにはなりません
 反省してます…。…もぉ〜芯、言い過ぎっ!』
『…ありがと〜美玖〜』

スピーカーから聞こえてくる真子の声。どうやら、沢森邸で食後のデザートを食べながら、都村と話を弾ませている様子。微かにしか聞こえてこないが、真子の周りには、ぺんこう、美玖、理子、光一が居るらしい。むかいんの声が聞こえてこないことから、恐らく、デザートを作っているのだろう。

真子の声が、真北の耳に直接、聞こえているからなのか、真北の表情は、緩みっぱなしだった。

「真北さん、そろそろ返してください」

栄三が真北に手を差し出したが、真北は、その手をしっかりと握りしめ、握手する。

「ちゃいますって!」

しっかりと握りしめられた手を振り解こうとするが、

「いてて…」
「…すまん…」
「てか、兄貴、気ぃつけてや〜もぉ〜」
「ごめんって…」
「痛み止め飲むか?」

傷が痛み出し、いつにない栄三の言葉を耳にして、心配げに、くまはちが声を掛ける。

「それより、飯はぁ〜? …くまはち、頼んでええか?
 真北さんに頼んだら、一服盛られるねん」
「俺も盛るで」
「………もうええ〜たかし〜」

喫茶店で仕事中の西守を呼ぶ栄三だったが、良いタイミングでドアが開き、

「お待たせ致しました〜。普通の食事でぇ〜す」

と、西守が四人分の料理をワゴンに乗せて部屋へ入ってきた。

「やった〜! 普通の食事や〜。何も盛られてへん〜」

嫌みったらしく真北に聞こえるように言う栄三を、真北は、ギッと睨み付け、一発殴りたい雰囲気を、ありありと見せつけていた。

「ほんま、怪我人で良かった〜」
「……完治したら、覚えとけよ、栄三」
「俺、記憶力悪いから、忘れますよ〜。ほな、いただきまぁす!」

嬉しそうに言って、栄三は、テーブルに並べられた料理に手を伸ばした。

 だいぶ戻ってきたか…。

栄三の様子を伺っていた真北は、軽い口調が時々出てきたことに、ちょっぴり安心していた。
真子にばれる前に、栄三の怪我が完治してないと、何かが起こりそうで…。

「真北さん、八造くんも、どうぞ」

西守が声を掛ける。

「お言葉に甘えて…いただきます」
「すまんな〜」
「ごゆっくり〜」

くまはちと真北が料理に手を伸ばしたのを見て、西守は店へと戻っていった。
料理を頬張りながら、真北は、イヤフォンから聞こえる会話に耳を傾けていた。
同じ会話は、パソコンのスピーカーからも聞こえている。

「いつもと変わらん接し方やな」

真北が静かに言うと、栄三は、パソコンの音量をオフにした。

「暫くは、様子を見るということで、二人のことは、
 私が調べておきますね」

丁寧に言う栄三に、

「あぁ。よろしく」

短く応える真北だった。

 あっさり退いたなぁ…。こりゃ、単独で調べるつもりやなぁ。

真北の表情をちらりと見て、すぐに目線を逸らした栄三は、何かを企んでいる様子。

 ……栄三にしては、珍しいな…。何かあるな、これは…。

その栄三の表情をジッと見つめながら、くまはちも何かを考え込んでいた。

 そろそろ帰宅してくださいね〜真子ちゃん。

イヤフォンから聞こえてくる真子の声を堪能しながらも、真子の体調を心配する真北。

 食事時の雰囲気ちゃうねんけど……。

険悪なオーラが漂う中、健は三人の姿を視野に入れないようにと、西守が作った料理を凝視しながら、静かに食べていた。




くまはち運転の車で、真北は帰路に着いていた。

「足りたんか?」

西守が用意した食事の量は一人分。いつも二人分に近い量を食べる くまはちには、足りないものであり…。

「一応、夜食の依頼は、しときました」
「素早いなぁ〜」
「ところで、真北さん」
「あん?」
「沢森さんと都村さんのことですが…」
「暫く様子見る言うたよな」
「えぇ」
「何か不満か?」
「……二人に一番良く接してるのは、むかいんですよね」
「そうやな」
「むかいんって、危険人物に関しては、無意識のうちに
 攻撃するか、警戒しますよね…」
「そういや、そうやったな」
「……二人には、そんな素振り見せてないんですが…」

くまはちの言葉を聞いて、真北は考え込む。

「くまはち…」
「はい」
「…お前は、どう思う?」
「私ですか……」

そう言って、今度は、くまはちが考え込む。
暫く、沈黙が続いた。
赤信号で車は停まる。交差点を行き交う車を、ただ、二人は見つめていた。
信号が変わり、青信号と共に、くまはちは、アクセルを踏んだ。
通い慣れた道。
真子が高校生の頃に、よく行き来した道だった。街並みは、少しばかり変わっているが、見慣れた景色でもある。

真北は、流れる景色をただ見つめるだけで、先程、くまはちに問いかけたことを、忘れていた。
くまはちは、左にウインカーを出し、ハンドルを回す。この道を真っ直ぐ行けば、家に着く。
そして…。



真子達が、沢森邸から出てきた。

「今日は、本当に、お世話になりました」

見送りに出てきた都村に、真子は深々と頭を下げた。

「遅くまで失礼しました」

ぺんこうも頭を下げる。

「いえいえ。私共も、楽しい時間を過ごせました。
 また、お時間がある時に、来て下さい。次は、
 私が手料理を振る舞いますよ」

なんでもこなしそうな都村が言うと、少しばかり笑いが起こった。

「楽しみしてます」

真子が言うと同時に、ぺんこうの眉間にしわが寄った。
何かを感じ取ったらしい。
真子は振り返る。

「…なるほどぉ〜」
「無茶してへんかったらええんやけどなぁ」

ちょっぴり不機嫌な感じで、ぺんこうが言った。
真子が見つめる先は自宅。自宅前に、くまはち運転の車が停まり、駐車場へ入る様子があった。
車が停まると、真北と くまはちが降り、沢森邸の方を見つめてきた。



真北と くまはちは、沢森邸の前で話し込む真子達を見つめる。

「真北さん」

くまはちが、静かに口を開いた。

「なんや?」
「私の答えは、あの通りですよ」

そう言って、くまはちは、優しく微笑んでいた。
真北は、くまはちが見つめる先にある笑顔溢れる雰囲気を見て、フッと息を吐く。
見つめる先の真子が、笑顔で手を振っていた。

その様子で分かる。
元気を取り戻し、いつもの真子に戻っているということが……。

「そうか。…ほな、俺も、いつもの通りや」

そう応え、真北は沢森邸の方へと歩いて行った。

「今までお世話になっていたんですかっ!」

ちょっぴり怒った口調で、真北は真子に話しかけ、

「都村さん、本当に今日は申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げた。

「いえいえ。私たちのほうがお世話になりましたよ。
 それに、沢森も楽しい時間を過ごせて、凄く満足げな
 表情をして、今は、眠ってしまいました」
「……って、それは、お疲れになっているのでは!!!
 本当に、申し訳御座いませんでしたっ!!」

恐縮そうに、真北が謝るものだから、その場に笑いが起こってしまった。

「おっちゃん、大丈夫やで。沢森さんの寝る時間に
 なっただけやねんって」
「……それにしても、本当に……」

時刻は午後九時前。沢森邸で長居していたらしい。

「たまには、よろしいのでは?」

本当に楽しい時間を過ごしたようで、都村は、とても和かな笑顔を見せていた。

『敵は作らないほうがいい』

そう言い切った時の雰囲気とは正反対の都村の姿が、そこにあった。



真子達が自宅に入ったのを見届けて、都村は沢森邸へと入っていった。
ドアを閉め、鍵を掛ける。そして、沢森の部屋がある方を見つめた。

 どのように出るのか、楽しみだな…。

怪しげな笑みを浮かべて、都村は一歩踏み出した。




その夜。
子供達が寝静まった時間に、リビングでは、真子と真北、そして、くまはちの三人で、この日、真子の身に起こった出来事について話し合っていた。

「本当に、御心配をお掛け致しました」

真子は深々と頭を下げる。

「真子ちゃん。それは、私にもありますよ。油断してました。
 本当に、申し訳ない…」

真北も頭を下げた。

「心当たりは、本当にないんですか?」

真北が真子に尋ねると、真子は深く考え込んでしまう。

「無い…。今まで、至って平和だったし、五代目を
 外してる時は、狙わないという約束になってるし、
 敵対してる組には、ここのことは知られてないし…」

そこまで話した時、真子は何かに気が付いた。

「この地域を知ってて、ここに足を運んだことのあるのは、
 竜次だけだよね。…でも、竜次は、あれ以来、
 姿を消してるんでしょう?」
「えぇ」

真北は嘘を付く。
ビルに来た新竜次を追って竜次が須藤を撃ち、逃げた新竜次を追って、街の中を走り抜け、その途中で待機していた真北に阻止された途端、ヘリで銃撃したことは、真子はまだ、知らなかった。

「真北さんの方じゃないの?」
「私の方にも、心当たりが無いんですよね…」
「…くまはちは?」
「無いですね…」

三人は、眉間にしわを寄せ、首を傾げた。

「兎に角、今後は二人だけでの行動は禁止です。
 夏休みは残り五日間。その間は、くまはちが
 一緒に居ること」
「今回は珍しく二人っきりになっただけやん。それに、
 私自身、すっかり忘れて出掛けてしまったけど、
 もう、しません。明日から理子も居るし……あっ!」
「ん?」
「真北さんが、休めばいいんちゃう?」
「いっ?!????」

真子の突然の言葉に、真北は突拍子も無い声を挙げる。

「ビルの方は、納まるまで、くまはちに頼んでるし、
 須藤さんや えいぞうさんたちも動いてるんでしょ?
 結果の報告が無いということは…」

そう言って、真子は、くまはちに目をやった。

「やはり、まだ…あかんの?」

真子が尋ねたいことは解る。だが、言えないことが多い。しかし、ここで、真子から目を逸らすと、疑われることは確かであり、更には、真子自身が自分で動くと言いそうで…。

「その件に関しては…」

と、くまはちが応えようとしたときだった。
くまはちの携帯電話が震える。

「失礼します」

携帯電話の画面を確認すると、くまはちは、とある電話番号を押した。

「こんな時間になんやねん…」

応対の仕方で、相手が誰か、すぐに解った。

『やっほぉ〜ん。組長に代わってんか〜』

栄三だった。

「組長、栄三からなんですが、どうされますか?」
「暫くお話してへんし…代わって〜」

そう言って、真子は、くまはちの携帯電話を手に取り、栄三と話し始めた。

「何々? どしたん? こんな時間にお話って」

真子は怪しむこともなく、話しかけた。

『今日のこと、真北さんから聞きましたよ』
「………真北さんに、あとで、蹴り入れとくわ」
『それでしたら、私も…ですね? くまはちにもですよ』
「そうやね〜」
『組長には、誰が蹴りを入れればよろしいですか?』
「……なんで?」
『私を含め、組長も油断してましたよね…』
「そうでした…」
『なので、誰にも怒れませんよ』
「反省してます」
『それと、いつものページにアップしてますので、お時間があれば
 確認してください。今回は、健もがんばりましたよぉ』
「ありがと〜。お疲れ様でした。…で、終わりそうなん?」
『ほぼ終了ですね。あとは、それぞれへのアドバイスです』
「そっちは、くまはちと須藤さんに任せておけば、大丈夫でしょ」
『こちらの個人的な部分は、私じゃないと無理ですよ』
「そっか。ほな、よろしくね〜。……無茶してへん?」
『はい。ありがとうございます。おっと、そろそろ寝る時間ですね。
 今日のこともございますので、もう寝てください』
「すんごくのんびり寝てたみたいだから、眠くない」
『組長』

それは、真子の行動を制御する感じの呼び方。真子は思わず身を引き締め、

「寝ます」

素直に返事をする。

『よろしい』

いつものやり取りに、真子は安心したのか、笑みを浮かべ、

「ありがとぉ、えいぞうさん。ほな、お休み〜。
 くまはちに代わる?」
『遠慮しまぁす。では、おやすみなさい』

栄三の方から電話を切った。
真子は、携帯電話をくまはちに差し出した。
くまはちは、受け取ろうと手を差し出したが…、

「何か、隠してへん?」

真子の鋭い言葉に、くまはちは、返す言葉が出てこない。

「えいぞうさんが、いつものえいぞうさんじゃなかった…。
 真北さん、無茶させてへん?」
「そうですね…。組長の分まで張り切って動いてるだけですね」
「そっか…そうしようって、同意したんだっけ…」
「まぁ、それが、栄三の思いですから、大丈夫ですよ」

優しく応える真北だった。

「今回は、えいぞうさんに甘えすぎたかなぁ」
「栄三が買って出てるんですから、それでいいんです」

真北は力強く言い切った。

「本当に、無茶してへんよね…」
「えぇ。その辺りは、私が制御してますので、
 真子ちゃんは、安心して、結果を待っててくださいね」
「…そうする…」

ちょっぴり煮え切らない感じで真子は言った。

「…真北さん。その後、新竜次の方は、どうなの?」
「黒崎から定期的に連絡来てますよ。特に変わりなく
 過ごしているそうです」
「そっか。体調に変化はないんかなぁ」
「その辺りも、黒崎に任せておけば、いいですよ」
「うん…」

それでも煮え切らない真子を見て、真北は、真子の隣に座り、そっと頭を撫でた。

「そろそろ寝てください」
「そうします。…今日は、本当に…」
「もう言わないでください」
「は〜い」
「返事は短く」
「はいっ!」

随分昔にもあったやり取りに、真子と真北は懐かしさもあり、思わず笑ってしまった。

「ほな、寝る〜」
「あっ、組長」

立ち上がった真子を、くまはちは呼び止めた。

「大丈夫。暫くは理子も居るし、外に行かないから
 安心してね」

くまはちの言いたいことが解っていたのか、真子は、くまはちが言う前にそう言って、

「おやすみ〜」

リビングを出て行った。

「お休みなさいませ」

くまはちは、真子の後ろ姿に一礼し、そして、直ぐに携帯電話で栄三に連絡を入れた。

『なんや、くまはち』
「えいぞう〜、お前なぁ」
『ほな、どう返すつもりやったんや?』
「…うっ……それは…」
『正直に伝えるつもりやったやろが』
「それだと、お前が困るやろ」
『そうやで。だから、俺のメッセージに
 応えたんやろ?』

栄三は、真子の自宅のリビングでの会話を聞いていたらしく、真子の問いかけに対して、くまはちが応えに困りそうだと予測し、良いタイミングで、

(メッセージ)電話くれ。対応する。

くまはちに、メッセージを送っていた。

「…あぁ」

くまはちは、このときばかりは、頭が回らず、不本意ながらも、栄三に頼ってしまった。

『納まっとんねん。ぶり返すな』
「ありがとな」
『おぉ、熱あるんちゃうか?』
「じゃかましぃっ」

怒り任せに、電話を切った くまはちだった。

「……くまはち」

真北に呼ばれて、

「あっ、すみませんでした」

我に返る、くまはちだった。

「で、明日はどうする?」
「須藤さんたちに渡した書類のまとめと、それに関する
 対応ですね。いつもの業務ですね」
「そっか。俺は、今日の事件の操作と片付けやろなぁ」

真北はソファにふんぞり返り、背伸びをする。

「どうだったんですか? 聞きそびれてるんですが…」
「木っ端微塵。まぁ、研究内容は、施設を移動してたらしくて、
 続けることができると連絡があったんやけどな、ただな…」
「竜次が行っていたもの全て…ですか?」
「あぁ。例の場所…ライが監禁されてた場所は
 そのまま埋めたやろ。どうも、そこかららしいねん」
「まだ、残ってたということですか?」
「可能性や。そこ中心に爆発して、木っ端微塵や。
 目の前は、砂の山やったで」
「瓦礫ではなく?」
「あぁ。そこまで細かく出来るとは、驚きや」
「それで、真北さんの予想は?」
「くまはちと同じかもなぁ」

そう言って、ニヤリと笑みを浮かべて、くまはちに目をやった。

 ラ・イ

真北と くまはちは、声を出さずに、同時に口だけを動かした。

「さてと。俺も寝るで。……飲むなよ」
「飲みません」
「おやすみ〜」
「おやすみなさいませ」

リビングを出て行った真北に一礼し、くまはちはリビングを整え、戸締まりの確認をした後、電気を消し、二階へと上がっていった。
すでに全員、眠りに就いたのか、静けさが漂っていた。
くまはちは、自分の部屋に入り、着替えた後、目を瞑った。




夜明け前。
薄暗さのある道に、くまはちの姿があった。
この日は、いつもよりも少しばかり遠くまで、走っていた。
特に怪しい雰囲気は観察されず、須藤家の前を通り過ぎた時だった。

「……くまはちぃ…どこまで、来とんねん」

名前を呼ばれて足を止め、振り返ると、須藤が玄関先に立っていた。

「おはようござ………お早いお帰りで」

どうやら、須藤は朝帰りをしたらしい。

「ったく、あの短期間で次の課題まで書き上げやがって。
 お陰で、今まで掛かったやないか」
「後ほど、確認致します」
「今日はビルなんか? 組長と自宅ちゃうんか?」

真子の身の上にあった出来事を知っている口ぶりだった。

「ビルですね。組長は、理子ちゃんと過ごします」
「大丈夫なんか? 理子ちゃんの身に何か遭ったら、
 それこそ、危険やないけ」

一番厄介な暴れん坊料理長の事である。

「自宅から出ないことになりましたので、ご安心を」
「ほな、組長は、夏休み明けからやな?」
「予定通りです」
「わかった。呼び止めてすまんな〜。あっ、俺、今日は
 休みにするで。それと……俺んとこまで見回りせんでも
 ええからな〜」
「失礼しました。では」

くまはちは深々と頭を下げて、再び走り出す。

「ったく…。まぁ、ええわ。あの量、どうするやろなぁ〜」

何かを企んでる表情をして、ニヤリと笑みを浮かべて家に入っていく須藤だった。


 あれは、しこたま書類を作ったやろなぁ。

須藤の企みは、くまはちにばれている。
まぁ、どれだけ書類を積まれようが、くまはちは、こなしていくし、予想以上の成果を出すことは、誰もが知っていることでもあった。

空が白々と明るくなりはじめた。
くまはちは、少し足を速める。そして、公園の近くに差し掛かったときだった。

「!!!!」

何やら不穏な空気を感じ、足を止めた。
感じる気配のある場所に目をやると、そこには、一人の男が立っていた。
その男は、ゆっくりとした足取りで公園へ入っていく。
くまはちは、その男が気になったのか、スピードを落としながら、自宅に向かう道を変え、公園に沿う道を左に曲がり、フェンス越しに男の様子を横目に確認しながら走って行く。

男は、地面や木をじっくりと見つめるだけで、公園の遊具には見向きもしない。
公園の奥まで歩いて行く男は、突然、踵を返し、公園を出て行った。
くまはちは、足を止め、男の様子を伺っていた。
公園の前に車が停まり、男は、その車に乗って去っていった。

 気のせいか…。

そう思い、自宅に向かって走り出す くまはちだった。




車の運転手は、ルームミラー越しに、後部座席に座る男を見つめ、

「勝手に出歩かないでください。心配したでしょうがっ!!」

ちょっぴり怒った口調で言った。
後部座席の男は、深く座り、天を仰ぎ大きく息を吐く。

「悪かった」

静かに言って、男は、窓の外を流れる景色に目をやった。

「一体、この街に何があるんですか?」

運転手は、先程とは違い、優しい口調で後部座席の男に尋ねる。

「分からん。だが…気になるものがあってな…。
 昨日、仕掛けたんだが…」
「何を仕掛けたんですか?」

少し驚いたように、運転手が声を掛けた。

「……気になった女性を手に入れたかっただけだ」

後部座席の男の言葉に、運転手は返す言葉を考えていたが、男は話し続ける。

「しかし、手が足りんから、逃げられてしまってな…」

後部座席から車内のルームミラー越しに運転手を見つめた男…竜次だった。

「あまり、お一人で、行動しないでください」
「俺がどこに居ても、すぐに来るだろうが」
「当たり前ですっ! もし、竜次様に何かあったら…」

運転手の目は潤んでいた。その目に気付いたのか、

「…まだ、動くのも無理なんだろが。俺のことよりも、
 自分の体のことを一番に考えろ」
「もう、大丈夫ですから、こうして…」
「…ありがとな」

竜次は微笑んでいた。


あの日……。


新竜次を求めて、AYビルの地下駐車場へ足を運んだ竜次と付き添いのスーツの男。
スーツの男は、運転席から竜次の行動を全て見ていた。

竜次は、須藤に怪我を負わせ、逃げた新竜次の車を追うよう、スーツの男に指示を出す。
地下駐車場の出入り口へと向かった時、出口に向かっていた追っている新竜次の車が引き返し、地下駐車場内を走っていく。それを追いかけるように引き返したが、新竜次の車は、怪我をしていた須藤を乗せて、地下駐車場を弾丸の如く飛び出していった。

「追いかけろ」

竜次の指示の下、スーツの男は、新竜次の車を追うように、アクセルを踏んだ。
ターゲットを追いかけながら、ハンドルの横にある小さなパソコンの画面を操作する。リターンキーを押した時だった。
衝撃を受けると同時に、男はブレーキを踏んだ。

「うぐっ……」

スーツの男は、全身に痛みを感じ、蹲る。
何が起こったのか把握するのに時間が掛かった。
車のドアが開いた音で我に返り、顔を上げると、後部座席に座っていたはずの竜次の姿が無かった。

「りゅ…うじ様…!!!」

車の横に、竜次の姿があった。
竜次は、何処かに向けて、ライフルを構えていた。
ライフルの先に見える男は、両手に銃を持ち、銃口を竜次に向けていた。
スーツの男は、衝撃で床に落ちた小さなパソコンを操作する。すると、小さな画面に、ビルの屋上が映し出された。画面を操作し、竜次に銃口を向ける男の姿を映し出し、銃のマークのあるアイコンを押した。

直後に、銃声が響き渡る。

「動けるか?」

竜次の声が聞こえた。
顔を上げると、竜次が助手席のドアを開けて、スーツの男に手を差し出していた。

「はい…」

そう応えた時、額から右頬に生ぬるい何かが伝わり、顎から下に滴り落ちた。
それが、自分の血だと気付いた。
しかし、それを気にしている場合では無い。
竜次に銃口を向けていた男は、銃弾から逃れ、身を隠していた。それを確認し、スーツの男は、小さなパソコンでヘリを操縦し、車の屋根の上に着陸させた。同時に、車から降り、流れる血を拭いながらパソコンを手に取り、竜次に続いてヘリに乗り、直ぐに上昇させた。

ヘリのアラームが鳴った。
とあるボタンを押し、急上昇させる。

「妨害したので、暫く受信できません」

スーツの男はヘリを操縦しながら、竜次に伝えた。

「わかった。大丈夫か?」

血は、再び頬を伝っていた。

「意識はあります…!!! ありがとうございます…」

竜次の手が、自分の頭の傷を抑えていた。


とある施設が見えてきた。
スーツの男は、施設の屋上にヘリを着陸させる。
ヘリから降りた竜次とスーツの男は、施設の屋上の出入り口へと向かい、建物内へと入っていった。

「途中まで追跡されましたので、恐らく、この場所に
 気付くと思います」

とある部屋に向かいながら、スーツの男が静かに伝えると、竜次は、足を止め、何かを考え込んだ。そして、

「仕方ない。次の場所に移動する」
「はっ。では、準備します」

スーツの男は、荷物をまとめ、施設の駐車場に停めている車に素早く乗せた。

「完了です」

竜次とスーツの男は車に乗り込み、施設を後にし、何処かへ向かって去っていった。


それから数日後、その施設が、跡形もなく爆発し、砂のような山だけが残った。
そこへ、真北が到着し……。




朝焼けの眩しさに目を細めながら、スーツの男は、車を運転していた。
後部座席に座る竜次は、いつの間にか眠っていた。

 今回は、一週間かな…。

記憶を失った今の竜次は、活動期間と休眠期間が交互にやってくるらしく、それは、突然発生する為、スーツの男は、記録を付けていた。
活動した期間と同じだけ、休眠する。
今回は、一週間、活動していた。
竜次は、この日のように、スーツの男に何も告げずに一人で行動した後、必ず休眠している。

「竜次様。ゆっくり休んでください。そして、
 次、目を覚ましたときこそ、記憶が戻っていることを
 祈っております」

こうして、何度も祈るスーツの男。
しかし、未だに、竜次の記憶は戻らない。

 そういや、気になっていた女性って、誰だろう…。

スーツの男は自分の記憶を探るが、全く覚えがない。
次に、竜次が目を覚ました時の為に情報を集めておこうと思ったものの、記憶に無い女性に対しては、情報を集めることは出来ない。
ちょっぴり諦めた表情をしながら、スーツの男は、車を走らせていた。



公園で見た男が竜次で、真子を狙っていたのが竜次だったとは、気付くことも無く、くまはちは、ビルへと向かっていた。
記憶を失っている、今の竜次には殺気が無かったらしい。だからこそ、竜次だとは気付くことはできなかった。

ビルに向かう車には、むかいんも乗っていた。
昨日、真北と栄三と話していた沢森と都村のことを、それとなく尋ねる くまはちに、むかいんは

「特に、警戒するようなことは、感じないけどなぁ」

なぜ、そういう質問が出るのかと、不思議に思っているのか、驚いた表情で、応えていた。

「むかいんが警戒してないから大丈夫だと、
 真北さんにも言ってるんだけど、今朝の様子だと、
 まだ、疑ってそうだったよなぁ」
「それでか。真北さんからいつも以上の
 警戒オーラ出てたのは…」

真北も、二人と同じ時間に家を出たのだが、いつもと違い、何かに警戒した雰囲気を醸し出していたらしい。

「そういう くまはちは、どうやねん」
「特に警戒するようなものは、感じていない」
「それなら、大丈夫なんちゃう?」

軽い口調で むかいんが言うものだから、くまはちは、眉間にしわを寄せた。

「怒らんでもええやんか。…俺も反省しとる」

くまはちの怒りを停めるかのように、むかいんが言った。

「誰もが、油断してたよな…」
「確かにな…。…でもさ、目指すのは……」

目指すのは、真子の身に何も起こらず、普通の暮らしを送ること。

真子が幼い頃から抱いていた思い。
そして、その思いは、真子の父・慶造も抱いていたものでもある。
命のやり取りをする世界ではなく、普通の暮らしをすること。

しかし、真子が、阿山組五代目組長として生きている限り、その思いを実現するのは難しい。

今は、五代目組長としての立場と、母の立場がある。真子を守る者達は、母としての立場だけを望んでいるのだが、真子自身、父が大切にしてきたものを、自分も大切にしたいという思いもあり、五代目組長としての立場から退こうとは、考えていない。

父が目指していたものを、引き継ぐ思いも強かった。



くまはち運転の車がビルに到着する。
むかいんと一緒に車を降り、地下駐車場から一階へ通じる階段を上っていく。受付で挨拶を交わし、この日の予定を伝えた後、むかいんは二階にある自分の店へ、くまはちは、直通エレベータで、事務所へと向かっていった。
鍵を開け、事務所に入った くまはちは、デスクの上に積まれている書類に目が留まる。

 予想以上やんか……。

今朝、須藤と会った時に感じた、須藤の企み。それには気付いていたものの、予想以上だったことに、くまはちは思わず笑みを浮かべてしまう。

 やったるで〜。

くまはちのやる気が満ちた瞬間だった。




その後、何事も起こらず、真子達は残りの夏休みを自宅の庭で過ごし、くまはちは、仕事の量や細かさを須藤と競いながら、水面下での動きにも対応していた。
栄三の怪我は、完治には、ほど遠いが、動かず、時には喫茶店に顔を出し、客と楽しい一時を過ごしている。

一方、真北は……。

再び、砂の山の前に居た。
そこは、以前、竜次が研究施設として使っていた場所である。施設の建物が、瓦礫ではなく、砂の状態になっていることを不思議に思いながら、突っ立っていた。

竜次が、この世を去ってから、五年近く、施設は稼働していた。半年前に、施設の拠点を移動することになり、一ヶ月前には、無人になっていた。

まさか、そこを利用していたとは、真北自身も想像していなかった。

背後に気配を感じ、振り返る。

「……リック…」

リックが、そこに立っていた。

「これは、一体……」

目の前の砂の山に、リックは驚いた様子だった。

「何しに来た?」

真北が静かに尋ねる。

「竜次が拠点にしている場所が爆破したと
 耳にして、飛んできたんだが、これは…」
「そっちの仕業だと思ったんだが、違うのか…」

真北は、リックの言葉尻から、予想していたことが外れたと確信する。

「…竜次自身か…」

大きく息を吐いて、真北は口を尖らせた。

「先日の襲撃後の行き先は、ここでしたか」
「……リック、てめぇら、どこまで把握していた?
 ここに居たことを知っていた口ぶりだな。
 他に隠してること、あるんじゃねぇのか?」

怒りが沸々と沸いてきたのか。真北の口調が変わっていく。

「ライ様の指示ですので、そちらには提供できません」
「まぁ、全部とは頼んでねぇから、強くは言わんが、
 まさかとは思うが、この状況は、ライが作ったんじゃねぇだろな?」
「建物事態が、もしもの場合を考えて設計されてますので、
 こうなるのは判っていたことですが、それにしても…」

リックは、砂の山を見上げる。

「…ライ様の指示だと疑われても仕方ないですね…」
「違うとは言わないんだな」
「特殊能力とは関係ありませんが、その応用と
 考えられます」
「応用?」
「設計者は竜次ですよ。竜次の研究には、
 医薬だけでなく、裏の世界でも使えるように
 準備していたんですからね、あの頃は。
 爆破で粉々になる状態にすることも可能だし、
 その反対も可能だという情報は、竜次から
 ライ様が聞いた話です」
「……俺の知らんことが、まだ、あったとはなぁ」
「本当に、全て知っていないと、落ち着かない方
 なんですね、真北さんは」
「そうじゃねぇと、動けねぇだろが。…って誰から聞いた?」

真北の怒りは沈まない様子。
リックへの言葉は、怒りが露わになっている。

「橋院長です」
「あんにゃろぉ〜〜」

真北のこめかみが、ピクピクとしていた。

「……リック」
「はい」
「飛んできた…と言ったが、どこに居た?」
「海外で情報収集してました」
「情報?」
「えぇ。竜次に関する情報です」

リックの言葉に、真北の眼差しが、更に鋭くなった瞬間だった。






「いってきます!!」
「行ってらっしゃい!!」

珍しく残暑が厳しい九月。
そんな暑さを物ともせずに、美玖と光一が学校の校門をくぐっていった。元気な子供達を笑顔で見送る真子と理子、そして、くまはち。
美玖と光一は、友達を見つけて、駆けていく。

「今日は午前だけやし、真子は行くんやろ?」

子供達の見送り当番である、真子と理子は、学校まで見送った後、帰路に着きながら、話していた。

「遅くなるん?」

真子は、くまはちに尋ねる。

「まとめたのですが、かなりの量になってますので、
 早くても夕方まで掛かると思います」
「いきなりなんや。張り切りすぎやで、くまはちさんも」
「須藤に言ってください」
「たきつけたのは、くまはちやろぉ」
「あっ、いや……そういうつもりは、ないのですが…」
「いつものことやん、真子」
「まぁね〜」

そして、自宅に着き、真子達は家へと入っていった。

真子と くまはちが、車に乗って、出掛けていった様子を、沢森邸の窓から、都村が見つめていた。



(2021.10.25 第一章 驚き 第二十二話 UP)


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※この〜復活編は、任侠ファンタジー(?)小説『光と笑顔の新たな世界』の極編の後の物語です。
※任侠ファンタジー(?)小説『光と笑顔の新たな世界』を全シリーズを読破しなければ、登場人物、内容などが解りにくい状態です。
※取り敢えず、任侠ファンタジー(?)小説『光と笑顔の新たな世界』を全てお読みになってから、アクセスお願いします。
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※尚、物語で主流となっているような組織団体を支持するものではありません。
以上を踏まえて、物語をお楽しみ下さいませ。


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