〜その9〜 うちには少し大きめの仏壇がある。 当然、鈴(りん)も大きい。 夏、暑い。当たり前だ。 タケちゃんは、初めて夏を迎えた。 やはり、暑そうである。 丸いネコが、まっすぐ伸びて、ぺっちゃんこ。 そりゃ、暑いはなぁ、そんなに毛があれば。 今日も暑い。タケちゃんはというと…。 「あぁ、こらぁ! だめでしょ!」 タケちゃんは、仏壇の中で寝ていた。 涼しいのだろうか…。でも、なんとなく、 涼しそう…。 「ただいまぁ」 おねぇちゃんが帰ってきた。仏壇の前を通って、部屋へ行く。 「へ?」 おねぇちゃんの目の端に、なにか得体の知れない白いものが。 それも、あるはずのないところに…。 「ほへ?」 得体の知れない白いもの。 それは、仏壇の鈴の中にあった……。 なんだか、ふさふさしている。触ってみた。 にゃ? 眠そうな目をして、顔を上げた。 タケちゃん、そりゃぁ、鈴は、鉄だから、冷たいけど、 何もそんなとこで、寝なくてもいいじゃないか。 おねぇちゃんは、鈴を鳴らしたい衝動にかられたが、 ぐっと、がまんした。 そんなタケちゃんも、大きくなり、 自分のからだの大きさを鈴で測っていたのか、 今では、鈴に入らなくなった、いや、入れなくなった。 すっぽりとまぁるく収まっていたタケちゃん。 そんなきみが、おもしろかった。 たしかに、仏壇とそのまわり、そして、鈴の中は、涼しい。 2015.5.16 改訂版UP どちゃん!著 |